【1月10日 AFP】米国の天文学者らは9日、テキサス州オースティン(Austin)で開かれた第211回米国天文学会(American Astronomical Society)会議で、銀河系付近には数百の「軌道を外れた」ブラックホールがうろつき、近くを通過する星や惑星などを飲み込む可能性があるとの研究を発表した。

 米バンダービルト大学(Vanderbilt University)のKelly Holley-Bockelmann準教授をはじめとする研究チームは、このような「中質量ブラックホール」は互いの重力で星が球状に集まった球状星団の中で複数のブラックホールが合体してできたもので、特別な環境以外では見ることができないと考えている。

  これらのブラックホールが地球を脅かすことはないとみられるが、その軌道上を通過する星雲や星、惑星が飲み込まれる可能性はあると研究チームは指摘する。「危険な領域であるシュバルツシルト半径(重力半径)はわずか数百キロと非常に小さい」(Holley-Bockelmann準教授)

 一方で、「中質量ブラックホール」に関する証拠は「超巨大ブラックホール」や「恒星質量ブラックホール」とは違って依然仮説的であるため、賛否両論ある。「中質量ブラックホール」とみられる物体が観測されたのはこれまでにわずか2度しかない。

 しかし、近年のX線観測により「中質量ブラックホール」の存在が示唆されたことで研究に弾みがつき、研究チームは球状星団に数多く存在する「恒星質量ブラックホール」と「中質量ブラックホール」が合体したらどのようなことが起こるかをシミュレーションするに至った。高度なコンピューターを使ったシミュレーションにより、このような合体により数百の「中質量ブラックホール」が誕生し、最大秒速4000キロの速度で球状星団から飛び出すとの結果が得られた。

 これにより、太陽の数倍の質量を持つ「中質量ブラックホール」が、いかなる恒星系にも属さずに「軌道を外れて」星間空間を高速で移動することになるという。(c)AFP