【1月4日 AFP】(1月5日 一部訂正)2008年米大統領選の予備選挙の幕開けとなる共和・民主両党の党員集会がアイオワ(Iowa)州で3日行われ、共和党はキリスト教プロテスタント、バプテスト派牧師のマイク・ハッカビー(Mike Huckabee)元アーカンソー(Arkansas)州知事(52)が勝利した。

■保守層に浸透

 選挙資金も外交経験も乏しいハッカビー氏の支持率は、数週間前にはわずか4%にすぎなかった。だが、機知に富んだ人柄や敬虔なキリスト教徒としての側面を武器に、保守的地盤のアイオワ州で勝利した。

 分裂状態にある共和党の地盤で「信仰・家族・自由」などの保守的価値観を打ち出したハッカビー氏のスローガンが、キリスト教保守派層にくすぶる不満を吸い上げて勝利に結びついた。

 人工中絶や銃規制の強化に強く反対し、移民法の強化などを訴えるハッカビー氏の公約がこうした層に支持されたほか、ユーモアに富みギター演奏の趣味を持つなどの親しみやすさも勝利の一因となったようだ。

 一方、最大のライバルと目されるミット・ロムニー(Mitt Romney)前マサチューセッツ(Massachusetts)州知事(60)は、ハッカビー氏の猛追を振り切ろうと大量資金をつぎこみアイオワ州での選挙戦に臨んだが、2位に甘んじた。

 ハッカビー氏のアイオワ州での勝利をうけ、ロムニー氏はフォックス・ニュース(Fox News)とのインタビューのなかで「マイクにお祝いを言いたい」と素直に敗北を認める一方で、「次はニューハンプシャー(New Hampshire)州だ」と語って早くも次の予備選への意欲を示した。

■失言癖の一面も

 一方でハッカビー氏には、過去に発言問題を起こすなど失言癖の一面も。

 1992年には「エイズ患者は隔離されるべきだ」との発言が物議を醸したが、ハッカビー氏は後に「おそらく今なら、もう少し違った物の言い方をする」とフォックス・ニュースに語っている。

 さらに前年にも「モルモン教徒はイエス・キリストと悪魔が兄弟だと信じている」との発言内容が米ニューヨーク・タイムズ・マガジン(New York Times Magazine)誌に掲載され、モルモン教徒であるライバルのロムニー氏に対し謝罪を余儀なくされた経緯もある。

■牧師から政界へ転身

 米国の中流家庭に生まれたハッカビー氏は、高校時代の恋人だったジャネット(Janet Huckabee)夫人との間に3人の子どもを授かった。

 成人してからは大半を牧師として過ごしたが、1992年の米上院議員選で初めて政治の世界に足を踏み入れた。しかし、当選には至らなかった。

 1993年にはアーカンソー州副知事になり、その後1996年から2007年には同州知事を務めた。知事時代には所得税を大幅に引き下げる一方、燃料とタバコに対する課税を引き上げた。

 保守派政治家のハッカビー氏だが、貧困家庭の子どもたちの教育や健康対策に税金を投じるべきだとも公言している。

 ベースギター奏者でもある同氏は、アイオワ州での選挙戦にも度々ギターを演奏してみせ、多くの低所得家庭の支持を獲得した。

 かつては肥満体型で糖尿病を患っていた同氏だが、2003年に50キロの減量に成功。その経験を著書『Quit Digging Your Grave with a Knife and Fork(ナイフとフォークで墓穴を掘るのはやめなさい)』にまとめた。

■リベラルなニューハンプシャー州では苦戦か

 アイオワ州では勝利したものの、ハッカビー氏が最終的に共和党大統領候補の座を獲得するまでの道のりはまだ長い。

 8日に予備選が行われるニューハンプシャー州は、リベラルな土地柄で、ここでの選挙戦の行方にも注目が集まる。キリスト教徒を拠りどころとするハッカビー氏が同州でアイオワ州ほどの共感を得るのは難しいとみられている。とは言え、かつては大統領候補選のランク外と目されていたハッカビー氏の予想外の善戦に、大統領候補の指名争いに敗れたとしても副大統領候補者に指名されるのではとの憶測も流れている。(c)AFP