【12月26日 AFP】(一部更新)英国のエリザベス女王(Queen Elizabeth II、81)は25日、毎年恒例のクリスマスメッセージを英連邦の国々の国民に向け送った。女王は事前に録画された映像の中で、イエス・キリストの誕生物語を「社会から閉め出された」一家の物語だとして、近代社会に取り残された傷つきやすい人々に手を差し伸べるよう国民に訴え、次のようなメッセージを送った。
 
「クリスマスの物語は、社会の片隅で生きるすべての人々にも目を向けるよう、わたしたちに教えてくれます。社会から排除されたと感じている人々や恵まれない人々、あるいは法に支配された文明社会がわれわれにもたらす恩恵を何らかの理由で完全に享受できない人々にも、しっかりと目を向けるよう訴えているのです。

 そうした人々にとって現代社会は、遠く、敵意に満ちた場所に思えることでしょう。

 彼らの存在に気づかぬふりをし、同情すらせず、問題を専門家たちに任せきりにするのは、とても簡単なことです。

 けれども世界の偉大な宗教の教えはみな、わたしたち一人ひとりに傷つきやすい人々を助ける責任があると強く訴えています。

 幸い、社会から孤立した『アウトサイダー』が存在を認められ、敬意を払われるよう尽力している団体や個人はたくさんあります。あいにく彼らの努力は、誰からも称賛されないし、見返りを得られるわけでもありません。

 しかしわたしたち一人ひとりもまた、ほんの少しの時間や才能や財産を提供し、責任の一端を担うことで、社会から排除されたと感じている人々が快適に暮らせるよう協力することもできるのではないでしょうか。

 年を重ねることの特徴の一つは、変化に敏感になることです。50年前に起きたことを覚えているということは、50年間の変化のありがたみが分かるということです。同時に、何が変わっていないかも分かるのです。

 わたしの経験から言うと、幸せな家庭は人間が存在するための大切な要因の一つで、それはずっと変わっていません。

 祖父母、両親、子どもからなる家族やそのほかの親族は、今もなお社会の中核なのです」
 
 女王はまた、イラクやアフガニスタン駐留部隊に対して敬意を表し、戦地で愛する人を失った人たちが、家族や友人に勇気や慰めを見いだすことを望むと語った。そして伝統的なクリスマス礼拝で使われる一節を引用して、さまざまな環境で苦しんでいる人々への配慮を忘れずにいることが何よりも主の御心を喜ばせることであると述べ、最後に次のような言葉でメッセージを締めくくった。

「皆さんがどこで、またどんな状況でこのメッセージを聞いていたとしても、すべての方々に祝福されたクリスマスをお祈りします」

 毎年恒例のクリスマスメッセージは、1932年にエリザベス女王の祖父にあたる英国王ジョージ5世(George V)が始めて以来、英国の伝統となっている。これは英連邦の国々の国民に対する女王自らの個人的メッセージであり、ほかの多くのメッセージと違い、閣僚からの助言を得ずに発表することができる。

 また、若者へもメッセージが届くよう、今年は初めて動画共有サイト「ユーチューブ(YouTube)」で配信された。(c)AFP/Robin Millard