【12月23日 AFP】フランスの援助団体「ゾエの箱舟(Arche de Zoe)」がチャドの子ども103人を同国から密出国させようとした事件で、チャドの首都ヌジャメナ(N'Djamena)の裁判所で21日、起訴された同団体のフランス人メンバー6人の公判が始まった。

■「子どもに親がいたことを知らなかった」

「ゾエの箱舟」のメンバーは今回の事件について、スーダン西部ダルフール(Darfur)で続く紛争から、国境を接するチャド東部を経由して孤児を救おうとしていたとの主張を続けている。

 同団体のEric Breteau代表(37)の恋人、Emilie Lelouchさん(31)は22日、2日目の公判で、子どもの一部は孤児でなかったが、孤児と信じ込まされていたと主張した。

 Lelouchさんによると、何人もの母親が同団体の現地事務所を訪れて子どもの返還を求めたという。「わたしたちは、その子どもに母親がいたことさえ知らなかった」とし、訪れた母親には子どもを返還したことを明らかにした。

 これより前、Lelouchさんは子どもたちの親に会ったことは一度もなく、会ったのは地元の村の指導者たちだけだと述べ、子どもたちは疑いなくスーダン人だと主張していた。

 Lelouchさんは、孤児の受け入れに同意したフランス人が支払った費用については「何事もただではない」と答えただけだった。

■スーダン人被告、「チャド人と知っていたがスーダン人と証明」

 被告側の弁護団は、メンバー6人は現地の仲介者にだまされたと主張。同団体のBreteau代表も21日、第1日目の公判で「事務所に連れてこられた子どもたちがスーダン人であることについて、ほんの少しでも疑った者はいなかった」と主張した。

 一方、スーダン人のSouleimane Ibrahim Adam被告は法廷で、ほとんどすべての子どもにチャド人の親がいることを知っていたが、うち63人に対しスーダン人と認める証明書に署名したことを認めた。チャド人3人がAdam被告とともに共謀罪で起訴されている。(c)AFP