【12月13日 AFP】(一部修正)1937年12月13日、当時中国の首都だった南京(Nanjing)に対して旧日本軍が開始した攻略、いわゆる「南京大虐殺」から70周年の今年、一人の日本人監督が南京虐殺はなかったと主張する立場から映画を製作している。

 70年目の今年は、同事件を扱った映画数本が各地で封切られおり、故アイリス・チャン(Iris Chang)氏の著書『レイプ・オブ・南京(The Rape of Nanking)』を原作とした映画『南京(Nanjing)』も、アジアや欧米で公開された。

■水島監督「大虐殺はまったく無いと思う」

 一方、「大虐殺はなかった」との立場から映画『南京の真実(The Truth of Nanking)』を現在、製作しているのが、日本の水島総(Satoru Mizushima)監督だ。水島監督はAFPの取材に対し、南京大虐殺は「まったく無いと思っている。突然、東京裁判になって持ち出されてきた」と語った。 

 中国は「南京大虐殺」をナチスドイツによるユダヤ人大虐殺「ホロコースト」にたとえ、約30万人の民間人が虐殺されたと主張している。12月に入り中国政府は、犠牲者1万3000人の氏名を公表した。旧日本軍の戦犯を裁いた連合軍による極東国際軍事裁判(東京裁判)は、犠牲者数を14万人としている。

 これまで日本政府は、戦時中に旧日本軍が南京を含め各地で行った残虐行為について、遺憾の意を示してきたが、その犠牲者数を公式に発表したことはない。

 複数の世論調査によれば、戦時中の過去に対する「反省が必要」と考える日本人が多数派だが、1990年代ごろから影響力を高めている右派の一部が「南京大虐殺は中国政府のプロパガンダだ」と主張している。

 水島監督は南京大虐殺について「蒋介石は南京陥落からの11か月間、300回の記者会見を開いている中で、『北京で日本がこんなことやった』『あれやった、これやった』っていろいろ言ってますけれど、南京のことを言ったことは一度も無い。あれだけ毎日、国際ジャーナリズムを相手に、記者会見を11か月間やって、たった一言も南京事件の大虐殺のことを言ったことがない。これなどは大きな証拠」と語る。

 水島監督の主張は日本の中で主流ではないが、戦時中の歴史について疑問を呈してきた主要政治家は数多い。9月に辞任した安倍晋三(Shinzo Abe)前首相は、東京裁判の正当性を疑問視する発言で物議を醸した。安倍氏の祖父の故岸信介(Nobusuke Kishi)元首相はA級戦犯(不起訴)だった。

 また、自民党の中山成彬(Nariaki Nakayama)元文部科学相が会長を務める保守系議員団体、「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」は6月、南京大虐殺は虚構だとする報告を発表し、中国政府の怒りをかった。

■製作には支持者5000人から2億円の寄付

 『南京の真実』を始めとする三部作の制作費として、支援者約5000人から約2億円の寄付が寄せられたという。映画の中では東条英機(Hideki Tojo)ら絞首刑に処されたA級戦犯7人は、母国を救うために責めを負い処刑された「殉教者」として描かれている。「(映画を)見てもらえれば、『ヒトラーと同じ東条英機』なんていう考えはまったく違うとよく分かると思う」(水島監督)。

 また監督は「中国文化に対しては敬意を持っている」としたうえで、しかし「中国政府のプロパガンダや反日教育の嘘を教えることは、糾弾されるべきだと思う」と言い切る。

 水島監督は、「南京大虐殺」は、米国が広島や長崎への原爆投下など自国の戦時中の行為を無視して日本を非難するための口実だったという。

 最後に同監督は、戦後、世界第2位の経済大国に成長し、米国の同盟国となった現在の日本の物質主義的なあり方について「戦後、ヨーロッパのコピーのような日本が生まれてしまった」と語った。現代の日本人について「心は荒れ果て、過去も未来も無く今しか生きられない」と表現し、「祖先と共に一緒に暮らしてきて、子どもや親を、未来や時間を大事にしてきた。しかし、とても寂しい民族になってしまった」と嘆いた。(c)AFP/Hiroshi Hiyama