【12月3日 AFP】米国の首都ワシントンD.C.(Washington D.C.)。市内の通りや建物にはフリーメーソン(Freemason)のシンボルマークがなぞに包まれたまま今も刻まれているが、大ヒット小説『ダ・ヴィンチ・コード(The Da Vinci Code)』の続編が、このなぞの一部を解き明かすかもしれない。

 著者のダン・ブラウン(Dan Brown)は、学者で冒険家の主人公、ロバート・ラングドン(Robert Langdon)の新たな冒険の舞台をワシントン都心に設定。歴史通にとって衝撃の事実を明らかにしようとしている。本作品の仮題は『The Solomon Key』で、まだ出版されていない。

 ワシントンD.C.にあるフリーメーソン組織「グランド・ロッジ(Grand Lodge)」のAkram Elias氏はブラウンと連絡をとっていたというが、その後連絡が途絶えたという。「皆が本の出版を心待ちにしているが、彼が何を書くのかはだれも知らない」

 ブラウンは自身のウェブサイトで新作について「ラングドンは米国で初めてミステリーに巻き込まれる。この小説では、首都ワシントンの秘密の歴史の探索を描く」と語っている。

■フリーメーソンと深いつながり、米ワシントンD.C.

 フリーメーソンは秘密の儀式に彩られた友愛組織で、歴史は古く活動範囲も広い。ワシントンD.C.は、そのフリーメーソンと深い歴史的なつながりを持つ都市だ。

 ワシントンD.C.の都市名の由来となった初代大統領ジョージ・ワシントン(George Washington)をはじめ、米国建国の父とたたえられるジェームズ・マディソン(James Madison、第4代大統領)やベンジャミン・フランクリン(Benjamin Franklin)らもフリーメーソンのメンバーだった。

 ホワイトハウス(White House)にほど近い16番通り(16th Street)のつじには、幅広の階段、石のスフィンクスや石柱などの特徴を持つフリーメーソンゆかりの建築物が立ち並ぶ。

 Elias氏によると、ワシントンD.C.の街路そのものがフリーメーソンの象徴をかたどった形で配置されているとの説もあるという。「偶然かもしれないが、無視できない証拠もある」(Elias氏)

 首都造営の際、ジョージ・ワシントン大統領は新首都の形を正方形にするよう設計を指示。「驚くべきことに、ワシントンD.C.を上空から眺めると、完全な正方形とコンパスがあらわれる。いずれも公正・平等を表すフリーメーソンの象徴だ」(同氏)

■注目浴びることへの懸念も

 一方で、物語の素材になることでフリーメーソンがあまりに目立ちすぎ、陰謀説と結びつけられる恐れがあると危惧(きぐ)する向きもある。

 フリーメーソン関連の品々を収集管理する施設のMark Tabbert氏は「フリーメーソンは共和国初期と米国の歴史を通じて重要な役割を果たしてきた」と指摘する一方、「彼らの活動にはいかなる政治的・宗教的意図もなかった」と語る。

 ワシントンD.C.の都市計画については「フリーメーソンよりも新古典主義の建築様式に基づいており、古代ローマの共和国モデルを基礎とする新しい共和国の首都として設計されたものだ」と話す。

 ブラウンの新作については「(ブラウン氏は)それほど綿密に調査を行う人物とは思わない」と懸念を示す一方で、「フィクション作家が書く物語だから」と理解を求めた。

 第1作目『ダ・ヴィンチ・コード』は映画化され、トム・ハンクス(Tom Hanks)が主人公を演じている。(c)AFP