【12月1日 AFP】(1日 一部更新)ベネズエラのウゴ・チャベス(Hugo Chavez)大統領(53)は、権限集中を目指し2日に行われる改憲を問う国民投票で、米国が画策していると同大統領が主張する混乱が発生した場合、米国への原油輸出を停止すると発表した。首都カラカス(Caracas)で30日、支持者数千人を前にしての演説で述べた。

 演説の中でチャベス大統領は、国民投票が行われる前に国内の全ての油田に軍隊を送り油田を守ると述べ、「『Operation Pincer』が2日あるいは3日に発生した場合、米国に原油は一滴も輸出されない」と発言した。

 チャベス大統領は、米CIAがコードネームOperation Pincerとされる妨害工作を画策し、国民投票を妨害し、同大統領の失脚を狙っていると主張している。

 具体的には、「もし国民投票が暴力を始める口実に使われるとしたら、ラファエル・ラミレス(Rafael Ramirez)エネルギー・石油相が北米への石油輸出を全面停止する」という。

 さらに、「国防省に30日夜から軍隊が油田と製油所を警備するよう指示した」と述べた。

 スペイン国王・フアン・カルロス1世(Juan Carlos)がチャベス大統領に「黙れ」と発言したことを受けて、ベネズエラはスペインとの関係も険悪になっている。チャベス大統領はカルロス1世が謝罪を行わなければベネズエラ国内のスペイン系銀行を国有化すると迫っている。

 国民投票への警戒感の高まりは投票の影響が拡大する様相をはらんでいる。世論調査会社も投票結果を予測し切れていない。

 チャベス大統領、野党勢力、および政治専門家ともに、投票結果が僅差となった場合、敗者が投票と開票の不正を疑い、暴力につながる可能性を指摘している。

 石油輸出国機構(OPECOrganization of the Petroleum Exporting Countries)の加盟国ベネズエラは現在、日産200万バレルの原油のうち60%を米国に輸出している。米国は現在、原油の11%を南米に依存している。

 米国とベネズエラとの関係は長らく緊張を続けているが、国民投票で改憲を目指すチャベス大統領は最近になり反米を数段声高に叫んでいる。

 チャベス大統領にとって今回の国民投票はこれまでにない大きな政治的賭となっている。事実、大統領の支持基盤である都市部の貧困層も多数が改憲にたじろいでいる。

 きわどい投票結果が予想されることで、チャベス大統領は、あらゆる反対勢力を「裏切り者」と非難し、国民投票を自らの「社会主義経済」と米国の「帝国主義」の闘争だと位置づけている。(c)AFP