【11月26日 AFP】(一部更新)25日の英科学雑誌「ネイチャー(Nature)」誌に掲載された、ナノテクノロジーに関する調査では、研究者や技術者は、ナノテクの将来性に自信をもちながらも、その危険性についてもより懸念を抱いているということが明らかになった。

 同誌に掲載されたナノテクの研究者や技術者363人を対象にした調査と米国の成人1015人を対象とした調査では、研究者と一般の人々との間のナノテクノロジーに対する非常に興味深い考え方の違いが明らかになった。

 米国では平均的な成人はナノテクに関し、雇用削減や軍備拡大、プライバシーの喪失などの分野で研究者よりも懸念を抱いているとの結果が出た。

 これに対し、研究者たちはナノテクが医療や環境浄化、国防の分野で大きな発展をもたらすのは確実としている一方で、ナノテクによって新たな汚染問題や未知の健康問題が引き起こされる危険性に関して、一般の人々よりも危惧(きぐ)していることも明らかになった。

 ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin-Madison)のDietram Scheufele氏率いる研究チームは、研究者と一般の人々との視点の違いには2つの要因があるとみている。

 まず、研究者間ではすでにナノテクをめぐる危険性についての議論がなされており、この分野の研究不足を理解している。一方、メディアはナノテクがもたらしうる恩恵を強調して危険性を軽視する傾向にあり、これが一般の人々にゆがんだ見方を与えているという。

 ナノテクの危険性を認識する研究者らは、呼吸により肺に取り込まれた微粒子や、損傷を受けた組織を修復するために体内に導入されたナノロボットが健康に与える影響を懸念している。さらに、ナノ物質が健康や環境にとって有害ではないかという問題も指摘されている。

 イリノイ工科大学(Illinois Institute of Technology)のNigel Cameron氏はインタビューで、「一般社会でのナノテクに関する反応は非常に遅くて弱い。それなりに議論をしてきていても、一般の人々や政界でのナノテクに対する認識は驚くほど低い」と述べた。

 ナノテクノロジーは、物質を毛髪の1万分の1の大きさであるナノメートルの領域で制御する技術であり、さまざまな分野でその可能性が期待されている。微細粒子を含んでいる化粧品や日焼け止め剤、洗浄剤など、すでに数多くの市販製品でナノテクは利用されている。

 しかし、ナノテクの研究者や技術者に言わせると、この技術はナノという微小な領域を扱ってはいるが、今後、さまざまな分野で革命的なインパクトを与えていくという。例えば、医療の分野では、体内診断を行う装置や患部に医薬品を正確に届ける技術などが挙げられる。

 今日利用されているどんな物資よりも軽量で強度があるナノ物資は、自動車や航空機の分野でも革命的な発展をもたらすと言われている。また、同様にロボット技術やコンピューター、衣類、エネルギー貯蔵、空気清浄などの分野でも開発が進められている。(c)AFP/Marlowe Hood