【11月22日 AFP】(一部更新)総選挙を2日後に控えたオーストラリアで22日、ジョン・ハワード(John Howard)首相が党首を務める自由党(Liberal Party)党員が関与する不正選挙運動が発覚した。
 
 自由党は、野党・労働党(Australian Labor Party)とイスラム原理主義の爆弾事件犯人らとを不当に関連づける情報を記したビラを配布したかどで、党員2人を除籍したことを明らかにした。

 オーストラリア警察および選挙監視団体によると、問題となったビラはシドニー(Sydney)市内の激戦区リンゼー(Lindsay)で配布された。

■現職議員と次期候補の配偶者2人が関与

 発行元の団体名は「Islamic Australia Federation(イスラム教オーストラリア連盟)」となっており、労働党のロゴマークとともに、2002年にインドネシア・バリ島で発生した爆弾テロ犯への支援や、問題視されているイスラム教指導者の豪州入国などで労働党の助力があったとして、同党に対する感謝文が掲載されていた。 

 リンゼー地区は、24日の選挙で激戦が予想されており、自由党が議席を死守すべく必死の選挙活動を展開していた。

 この事件で、同地区の自由党現職ジャッキー・ケリー(Jackie Kelly)議員の夫と、現在、同議員の後継として同党から立候補しているGreg Chijoff氏の妻の2人が、配布の事実を認め、謝罪した。Chijoff氏は、事件の責任をとって自由党を離党したと発表した。

■捨て身の選挙運動、労働党が非難

 事件について、労働党側は、同党の陥れを狙った汚い手法だと自由党を非難する一方、ハワード首相は選挙活動を中断して、自身を含めて自由党は2人の行為を事前に把握も、承認もしていなかったと弁明した。

「断じて容認できない行為だ。内容も無意味な悪意に満ちたものだ。自由党もわたしもビラを承認していない。だから、自由党の選挙運動とは関係ないし、私の意見も反映していない」

 投票日前最後のハワード首相の記者クラブ演説は、スキャンダルに影を投げかけられた形となった。

 一方、労働党のケビン・ラッド(Kevin Rudd)党首は、問題のチラシは自由党が政権にしがみつこうと必死であることの証だと述べ、与党の誰が事前にビラについて知っていたのかを公表するよう、ハワード首相に要請した。

「ハワード氏は今回の件がいかにして起こり、自由党組織内の誰がこれに気づいていたのかを説明する必要がある」とラッド党首は出演したラジオ番組で語った。「選挙前夜に起こった自由党による自暴自棄と苦し紛れの政治のあらわれだ」(c)AFP/Marc Lavine