【11月11日 AFP】チリの首都サンティアゴ(Santiago)で開催されている第17回イベロ・アメリカ首脳会議(Ibero-American summit)に出席したスペインのフアン・カルロス1世(Juan Carlos I)国王は10日、会議の閉幕直前、ウゴ・チャベス(Hugo Chavez)ベネズエラ大統領が繰り広げる激しい舌戦に、「黙れ」と発言し退場する一幕が見られた。

 カルロス1世国王は、チャベス大統領によるスペイン前首相が「ファシスト」だとする手厳しい演説が続いたことに耐えかねて、怒り心頭に発する余り会議の席を退出してしまった。

 第17回イベロ・アメリカ首脳会議は、中南米でスペイン語およびポルトガル語を公用語とするラテンアメリカ諸国、スペイン、ポルトガル、およびアンドラの欧州首脳が一堂に会し8日に開幕したが、問題の騒動が起きたのはその閉幕直前だった。

 短気な性格で知られ、ベネズエラに埋蔵される石油をテコに南米諸国のへの影響力の拡大を目指すチャベス大統領は、9日の会議出席直後からスペインの代表団の怒りを買う発言をしていた。

 チャベス大統領はスペインの保守系前首相ホセ・マリア・アスナール(Jose-Maria Aznar)氏を名指しで「ファシスト」だと批判し、社会労働党出身のホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ(Jose Luis Rodriguez Zapatero)現スペイン首相はチャベス大統領に対し、「敬意」を示すよう求めていた。

 ところがチャベス大統領は10日にも、アスナール前首相について、「ファシストは人ではない。ヘビのほうがファシストより人間性がある」とこき下ろし、「ファシスト」を連発した。

 これに怒ったカルロス1世国王は、チャベス大統領の演説をさえぎり、「いい加減黙ったらどうだ(Why don't you just shut up?)」と発言した。

 チャベス大統領はひるまず、同大統領が攻撃相手として好む米国をはじめ、ベネズエラのカトリック教会、法王などを矛先に選び次々と毒舌を展開し、2002年に起きたベネズエラのクーデター未遂を、同大統領の失脚を狙った米国と欧州各国が承認したとして非難した。

 これに加え、ニカラグアのダニエル・オルテガ(Daniel Ortega)大統領が、チャベス大統領を支持する発言をすると、カルロス1世国王は席をけるようにして会議場を退場してしまった。

 会議の混乱は、思想の相違を乗り越えて中南米の富と社会的地位の格差克服への取り組みを目指すという各国代表団が掲げていた目標に影を落とすこととなった。

 他の出席国の経済があまりに自由すぎると批判するニカラグアのオルテガ大統領、ボリビアのエボ・モラレス(Evo Morales)大統領、エクアドルのラファエル・コレア(Rafael Correa)大統領、キューバのフィデル・カストロ(Fidel Castro)国家評議会議長の代理を務めるカルロス・ラヘ(Carlos Lage)副議長らの支持を得て、チャベス大統領は強硬左派の先鋒(せんぽう)の役割を果たした。

 これらの国は11日、左派1万人の支持者による「人民サミット(people's summit)」の開催を呼び掛けるという。(c)AFP