【11月9日 MODE PRESS】建築ラッシュが続き世界でも有数の「建築巡礼地」となった青山・表参道。その地区再開発の最後の大きなコマとして注目を浴びていたジャイル(GYRE)が2日、表参道とキャットストリートの交差する角地に開業した。

 安藤忠雄の表参道ヒルズ、ヘルツォーク&ド・ムーロンのプラダ ブティック青山、隈研吾のONE 表参道、黒川紀章の日本看護協会原宿会館、青木淳のルイ・ヴィトン表参道ビル、伊東豊雄のトッズ表参道ビル、SANAA(妹島和世+西沢立衛)のディオール表参道・・・。名だたる建築家たちと名を並べ、今回ジャイルの設計を手掛けたのはオランダを代表する建築家集団MVRDV(エムブイアールディーブイ)だ。

 建築、都市計画、ランドスケープデザインなど幅広い分野で活動するMVRDVは、ウィニー・マース(Winy Mass)、ヤコブ・ファン・ライス(Jacob van Rijs)、ナタリー・デ・フリース(Nathalie de Vries)の3人により1991年に設立。周囲の景観や、建築密度、都市環境などのあらゆる情報を分析したデータをデザインに応用する手法で高い評価を得てきた気鋭の建築集団だ。

 彼らにとってジャイルは、日本国内では、03年7月の新潟・妻有アート・トリエンナーレのメイン施設としてオープンした「まつだい雪国農耕文化村センター」に次ぐ第2の作品となる。

 建物のコンセプトは、その名の通り「渦(GYRE)」だ。各階を層状にねじりながら積み重ね、ねじれによって生じた空間にテラスを設置した。さらに、テラス同士をつなぐようにビルの外周に階段を設けたりと、様々な箇所に工夫が凝らされている。ガラスやテラスを通して楽しむことができるケヤキ並木や夜景など、表参道の街並みを建物内に巧みに巻き込んでいく空間作りにも、MVRDVらしさが溢れる。

 この「渦」の効果はオープン前から発揮され、NY以外で初出店となるMoMAデザインストア表参道店の内装を担当したリチャード・グラックマン(Richard Gluckman)は、店内にさらに小さな渦を作り上げてしまった程だ。このジャイルが発する「渦」が表参道一帯を巻き込みながら、新たな東京の流れを生み出すかもしれない。(c)MODE PRESS

◆ジャイル3階のギャラリー「EYE OF GYRE」で、オープニング企画としてMVRDVの過去から現在にいたるまでのプロジェクトをたどる展覧会「PIECE BY PIECE, MVRDV」が開催されている。Public Broadcasting Company VPRO本社、アムステルダムの老人向住宅Wozoco’s、2000年ハノーバー国際博覧会のオランダ館、そして今回のGYREビルなど彼らの代表作品のドローイングや映像、模型などを一堂にみられる貴重な機会なので、お見逃し無く。