【10月30日 AFP】元来は欧米の宗教行事だったハロウィーンだが、今やアジアでもビジネスチャンスととらえる産業界やパーティー好きな人々の間で人気が高まっている。一方、死後の世界を重んじるアジア地域の伝統とハロウィーンとの関連を指摘する声もある。

 ハロウィーンの季節が近づくと、香港の市場にはランタン(提灯)、仮装パーティー用の仮面、カボチャの飾り物、仮装用衣装などを買い求める人々であふれる一方、韓国のソウル(Seoul)の街には、ビデオゲームメーカーや映画館、デパートなどが競ってハロウィーン向けセールを始める。

 フィリピンのマニラ(Manila)では、欧米同様に仮装した子どもたちが家々を回って菓子をねだる「トリック・オア・トリート(trick-or-treat)」が見られる一方、中国の北京(Beijing)やタイのバンコク(Bangkok)、ベトナムのハノイ(Hanoi)などでハロウィーンの行事が見られるのは海外駐在員のパーティーだけだ。

 香港在住の文化アナリスト、Nury Vittachi氏は、ハロウィーンの魅力はビジネスチャンスや娯楽のみならず、死後の世界や超自然現象に関心を持つアジア人の本質と一致すると指摘する。

「欧米ではお化けは悪い者とされてきた。しかし、アジアの文化においては、古くからお化けの存在はとても大きく、人々の親しみも深い。アジアでは、お化けが人間の味方や友人となることさえある」(Vittachi氏)

 中華圏では、ハロウィーンの数週間前に「盂蘭(Yue Lan)節」と呼ばれる祭りがある。「鬼節」とも呼ばれるこの祭りの期間、人々はお墓参りをするほか、「鬼」に捧げる贈り物を燃やす習慣がある。最近では、紙製のiPod、ブランドスーツ、航空券や絵に描いた「召使い」などを、「贈り物」として燃やすという。「鬼」が怒りださないよう、親族のいない墓にも供え物をする。

 一方、死後の世界への執着は、伝統的価値観を重んじる人々と、ハロウィーンの流行に飛びつく人々との間で、しばしば確執を引き起こす。

 香港中文大学(Chinese University of Hong Kong)文化宗教研究所の黎志添(Lai Chi Tim)教授は、多くの中国人がハロウィーンの急激な流行に困惑しているとみている。

「伝統的な考え方の中国人には、死者の霊を娯楽として扱うハロウィーンを理解できない。霊魂は死後もこの世に漂う存在として扱われる」(黎教授)

 Vittachi氏も、北京大学の学生が骸骨の仮装でハロウィーンパーティーに出かけたところ、警察の尋問を受け「路上で宗教活動をしてはいけない」と諫められたというエピソードがあったという。

 伝統と欧米的価値観の摩擦がみられる地域もあるのも事実だが、多くのアジアの都市ではハロウィーンは好意的に迎えられているようだ。

「みんなパーティーの口実が欲しいのです。パーティーが嫌いな人などいないでしょう?」(Vittachi氏)(c)AFP/Guy Newey