【10月29日 AFP】『ナバロンの要塞(The Guns of Navarone)』や『グレート・ブルー(The Big Blue)』といった作品から数十年が経過し、ギリシャが再びハリウッド作品の舞台として脚光を浴びようとしている。

 夫人のリタ・ウィルソン(Rita Wilson)がギリシャ系という俳優トム・ハンクス(Tom Hanks)が現在、2作品に対し融資を行っているのだ。政府関係者らはこれをきっかけに、遺跡やリゾート地の島々に訪れる観光客が増加することに期待をかけている。

■トム・ハンクスの2作品で再出発を期すギリシャ

 2作品のひとつは、女優ニア・ヴァルダロス(Nia Vardalos)が主演を務めるコメディ映画『My Life in Ruins』。ヴァルダロスは、2002年のロマンチックコメディで、米興行成績で史上最も成功したインディペンデント系作品のひとつになった『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング(My Big Fat Greek Wedding)』の脚本を書き、自ら主演した人物だ。彼女が今回演じるのはツアーガイドで、撮影はアクロポリス(Acropolis)、アテネ(Athens)、デルフィ(Delphi)、オリンピア(Olympia)などで行われた。  

 もうひとつは、大ヒットミュージカル『マンマ・ミーア!(Mamma Mia!)』を映画化した作品で、ピアース・ブロスナン(Pierce Brosnan)やメリル・ストリープ(Meryl Streep)が出演。スキアトス(Skiathos)島やスコペロス(Skopelos)島で8月に撮影が行われた。

 相次ぐハンクスのプロデュース作品は、徹底したお役所主義や組織のお粗末さなどを理由にメジャーな制作会社の撮影が数十年も行われてこなかったギリシャにとって、恩恵といえる。

「1980年代、ハリウッドでは、ギリシャは映画の舞台にはふさわしくないと言われていた」と語るのは、外国の制作会社の撮影の援助を行うHellenic Film CommissionのMarkos Holevas氏。

「変化を望む声があり、ギリシャはその利点を認識し、映画を通して自らをアピールしたいと考えています。ハンクス・ウィルソン夫妻は、この政策に共感してくれた最初の人です。過去を忘れ、新しくスタートするのです」。

■遺跡での撮影を阻む考古学者の規制

 絵画のように美しく、主な観光地にもなっているギリシャの島々は近年いくつかの映画の舞台になってきたが、いずれもメジャーな作品ではなかった。ケファロニア(Cephalonia)島では2001年、 ニコラス・ケイジ(Nicolas Cage)が出演した『コレリ大尉のマンドリン(Captain Corelli's Mandolin)』の撮影が行われ、2003年にはティーラ(Thira)島でアンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)が主演する『トゥームレイダー2(Lara Croft Tomb Raider: The Cradle of Life)』が撮影された。

 Holevas氏によれば、2004年には、オリバー・ストーン(Oliver Stone)監督が『アレキサンダー(Alexander)』の撮影を行う予定もあったが、このときギリシャ政府は撮影場所の提供を拒否したという。

 ギリシャには、テレビコマーシャルや映画の舞台として人気がある遺跡が多いが、同国の考古学者が示す厳格な規制が障害となってきた。さらにユーロ導入に続いた物価上昇の中で、同様の地形を持ち、制作費も安い近隣のバルカン諸国や東欧と競わなければならず、厳しい時代を送ってきたのだ。

「外国の制作会社は、ギリシャで食い物にされる傾向があります」と語るのは、前年、アテネでアメリカ映画の撮影を行ったプロデューサーのChristina Aspropotamiti氏。同氏は、パルテノン(Parthenon)宮殿での長期の撮影許可を申請した際、とても驚いたという。

「地元の考古学事務所が1平方メートルにつき1500ユーロ(約25万円)の使用料を要求してきたんです。アクロポリス全体だったら、購入したほうがいいような値段ですよ」。

■政治的な問題で撮影場所を変更したことも

 政治的に繊細な問題も、映画撮影を困難にしてきた。例えばジョン・マルコヴィッチ(John Malkovich)が出演し、1944年から1949年にかけて同国で起こった内戦を描いた1984年の『哀愁のエレーニ(Eleni)』だ。母親が共和派に処刑されたという同作品のプロデューサー、ニコラス・ゲイジ(Nicholas Gage)氏の伝記を映画化したもので、内戦時代に占領した地域で、残忍な行いをする共和派の姿が描かれた。

 ゲイジ氏によると、映画の労組は当時共和派が多数を占め、アテネで撮影を始めようとすると機材や明かりが破壊されるなど、妨害工作が起こったという。このため撮影場所はスペイン南部に変更された。

 ゲイジ氏は、「とても残念でした。現在の5000万ドル(約57億円)と同額を、ギリシャでも最も貧しい地域のひとつであるイピロスで使う予定だったんです。それがあれば、この地域は十分潤ったと思います」と述べた(c)AFP/John Hadoulis