【10月11日 AFP】ボゴン・モス(Bogong Moth)と呼ばれるガが大発生しているオーストラリアで、先住民アボリジニの伝統的な知恵を生かした画期的な解決策が編み出された。それは、この「害虫」を料理に使い食べてしまうことだ。

■ニューサウスウェールズ州でガが大発生

 キャンベラ(Canberra)とシドニー(Sydney)ではここ2週間で数百万羽のボゴン・モスが発生。窓辺や通行人に群がり空調用ダクトを詰まらせるなど、さまざまな被害を起こしている。キャンベラ在住の政府関係者らによると、今年のガの被害は過去最大のものだという。秘書官のHillary PenfoldさんはAustralian Associated PressAAP)のインタビューに対し、「火災報知器がガに反応して何度も鳴っているわ」と述べている。

 ボゴン・モスは例年、クイーンズランド(Queensland)州からスノーウィーマウンテン(Snowy Mountains)まで季節移動を行うが、今年はその途中で強風によってルートを外れてしまったとみられる。

■オーストラリア先住民の貴重な栄養源だったボゴン・モス
 
 キャンベラでレストランを経営するKurt Gruberさんは、このガを素材に使った料理メニューを来週から取り入れると語っている。「スープ仕立てにもできるし、ブランデーに入れてもいいですね。火であぶれば羽と毛が燃えてカリカリになります」。

 ボゴン・モスは脂肪とタンパク質が豊富で、数千年にわたりオーストラリア先住民アボリジニの貴重な栄養源として摂取されてきた。今年初めの調査によると、このガの胴体には、同じ量のビックマックと比べると3倍の脂肪分と2倍のエネルギー量が含まれているという。

 オーストラリアの伝統的な「ブッシュ・タッカー(自然食材料理)」と高級料理を見事に融合させたのは、フランス出身のシェフ、Jean-Paul Bruneteauさん。彼はボゴン・モスを「素晴らしい食材」と絶賛する。シドニー・モーニング・ヘラルド(Sydney Morning Herald)紙の取材に対し、「まるでバターを塗ったヘーゼルナッツのようにカリカリして、ポップコーンのような風味がある」と語っている。

■ヘーゼルナッツのようにカリカリで、ポップコーンのような風味

 食べるときは、羽をむしって胴体を3分ほどカノーラ油でローストするのがBruneteauさんのおすすめだ。ボゴン・モスを活用したメニューはほかにもいろいろあるそうで、片手いっぱいのボゴン・モスをミキサーにかけてオムレツにふりかけることもできるという。

 博物館に勤務するMartyn Robinsonさんは、さらなるつわもの。「ボゴン・モスは生が一番だ」という。ヘラルド紙の取材に対し、「窓辺にたまってるやつを羽をつまんで捕まえたら、口に入れるだけさ。エビのカクテルみたいな感じだよ」と語っている。(c)AFP/Neil Sands