【10月5日 AFP】米軍がイラク治安部隊に提供した武器が大量に行方不明になっている。数か月にわたる捜査にもかかわらず、米軍は供与した何万点もの小火器の行方を突き止めることができていない。大部分が武装勢力の手に渡っている懸念もある。

 例えば、米国防総省の統計によると、2003年から2006年末にかけて米軍はイラク警察に対し、オーストリアのグロック(Glock)社の半自動式拳銃12万5163丁を提供した。

 しかし2006年10月、米民間企業が配送した数とイラク側の在庫をイラク再建特別調査官が調査したところ、1万3180丁が紛失していた。

 さらにその9か月後、米議会調査団の調べにより、2004年と2005年に米軍が提供したグロック社のものなど、拳銃8万丁を含めた武器19万点の行方が分からなくなっていることも明らかになった。

 米国はイラク治安部隊が国家再建の中核を担うとみなし、2003年から2006年の間におよそ37万丁の小銃や拳銃を提供した。だが同調査官によると、そのうち所在が確認できるのは3%に満たないという。

■ずさんな管理

 元イラク警察官の男性はAFPに対し、「米軍は製造番号も登録せず、受領書もなしにわれわれに銃を与えた」と語った。男性は2004年の終わりに警察を辞め、拳銃を800ドル(約9万4000円)で「友人」に売却したという。

 警察や軍など治安部隊の辞職者数は数千人に上るが、彼らは武器を売却すればかなりの金額を手にすることができる。

 米軍による治安部隊の訓練が開始されて以来、解散した部隊が武器ごと行方不明になっているケースも複数ある。

 警察訓練生から民間の警備会社に転身した若者によると、その結果、闇市場にはグロックの拳銃があふれ、1丁1000ドル(約12万円)足らずで手に入れられる状況になっているという。

 手軽で頑丈な拳銃が豊富にあるのは、首都バグダッド(Baghdad)にはびこる武装グループや反米戦闘員にとってもありがたい話だ。

 そうした武器が、トルコの非合法武装組織、クルド労働者党(Kurdish Workers' PartyPKK)の手に渡っている例もあるという。

 元警察官の男性によると、2004年に米軍に再制圧されたイスラム教スンニ派の拠点、中部ファルージャ(Fallujah)では、「グロックはスンニ派武装グループIslamic Army in Iraqの『公式武器』となっている」という。

 米軍に訓練を受けた29万5000人のうち、20%が辞職または殺害されたが、ある米軍大佐は、彼らが所有していた武器の行方について「想像したくもない」と語った。

 米軍にとって最大の懸念は、イラク治安部隊のための武器が、イラク内務省と内通している武装勢力の手に渡っている可能性があるということだ。

 米議会調査団はイラク内務省について「誘拐やゆすり、わいろなどを手掛ける犯罪組織に利用されている」と述べている。内務省は取材に対しコメントを拒否している。(c)AFP/Herve Bar