【10月7日 AFP】米ニューメキシコ(New Mexico)州の人里離れた場所にあるロケット発射基地が、個人宇宙旅行時代の幕開けを告げる宇宙への玄関口となるかもしれない。

■宇宙旅行の座席予約も開始

 英国の実業家、リチャード・ブランソン(Richard Branson)氏の夢が実現すれば、2010年までには宇宙船「スペースシップ・ツー(SpaceShipTwo)」に搭乗して地球を飛び出し、宇宙の無重力を体験して帰還する旅行が可能となる。費用は20万ドル(約2300万円)かかるが、ブランソン氏の経営する「ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)」では、既に「スペースシップ・ツー」の座席予約を開始している。

「スペースシップ・ツー」は米国の航空宇宙エンジニア、バート・ルータン(Burt Rutan)氏が設計。定員は6人で、繰り返し宇宙飛行ができる予定。ロケット発射基地「スペース・ポート(Space Port)」を運営するニューメキシコ・スペースポート・オーソリティ(New Mexico Spaceport Authority)のベン・ウッズ(Ben Woods)氏によれば、1日当たり2-3回のペースで週5日間打ち上げられ、年間の飛行回数は70万フライトを超えるという。

 ルータン氏は2004年、ロケットデザインのコンペに優勝。2週間の間に2回宇宙飛行が可能な宇宙船の設計を受注して1000万ドル(約11億6000万円)を稼いだ。同氏は、この事業が成功すれば宇宙旅行産業は飛躍的に拡大するだろうと予測する。

 また、地元州当局者も民間宇宙旅行産業を通じた地域の再活性化を目指しており、物好きな大富豪のお遊びにするつもりはないとしている。

■最大の課題は輸送コスト削減

 この産業の関係者が直面する最大の課題は、乗客や貨物の輸送コストを大幅に切り下げること。エアロスペース・コーポレーション(Aerospace Corporation)のWilliam Ballhaus氏の試算によると、貨物1キロを宇宙に運ぶコストは2万ドル(約232万円)に上るという。

 民間宇宙旅行の事業はもちろん、失敗にも見舞われたことがある。今年7月、「スペースシップ・ツー」の実験中に、ルータン氏のもとで働く地上職員3人が事故で死亡。昨年は、米国の軍事衛星を搭載しマーシャル諸島(Marshall Islands)から打ち上げられたスペースX(SpaceX)ロケットが打ち上げ直後に爆発事故を起こした。

■Googleは賞金で宇宙産業の発展促す

 一方で民間宇宙旅行産業を発展させようと、インターネットの検索大手グーグル(Google)は、月面探査用ロボットを月に送り高解像度の映像やデータを送り返した企業や国に2000万ドル(約23億円)の賞金を出す企画を発表している。(c)AFP/Paula Bustamante