【10月1日 AFP】2万8000年前に絶滅したとされる人類の近縁にあたるネアンデルタール人(Neanderthal)は、これまで考えられていたよりも東方の広い範囲にまで進出していたとする研究が9月30日、発表された。

 ネアンデルタール人の骨の化石は、これまでスペインから中央アジアのウズベキスタンにまたがる地域で発見されてきたが、今回の研究により、ネアンデルタール人は、そこからさらに2000キロ東方のシベリア南部から今日の中国の西端近くまで来ていた可能性があるという。過去に発見された骨の化石に、新しい分析方法を適用する研究で明らかになった。

 ドイツのマックス・プランク研究所(Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology)のSvante Paabo氏率いる研究チームは、ウズベキスタンのTeshik Tashと、シベリアのアルタイ山脈(Altai Mountains)の2か所で発見された骨のミトコンドリアDNAの配列を、欧州のネアンデルタール人のものと比較した。 

 英国の研究誌「ネイチャー(Nature)」に発表されたその研究結果によると、シベリアのOkladnikov洞窟で発見された4万年前のものとされる成人の骨の化石は、欧州のネアンデルタール人のものと遺伝子的に一致することが明らかになった。

 これまで中央アジアで発見された骨の化石を巡っては、それがネアンデルタール人のものか、現生人類ホモ・サピエンス・サピエンス(Homo sapiens sapiens)のものかをめぐり、研究者の意見が対立していた。今回の研究は、この論争に一定の決着をつけたものといえる。

「ミトコンドリアDNAの配列に大きな相違はなく、両者はそれほど長期間にわたって隔絶されていたわけではない。ネアンデルタール人は約12万5000年前の温暖期に現在のロシアの平野部の大半に進出していたことになる」と研究は結論づけている。

 シベリアにネアンデルタール人が進出していたということは、さらに東の現モンゴルや中国にまで到達していた可能性もでてくるという。

 現生人類より小柄でずんぐりしたネアンデルタール人は現在の欧州、中央アジア、および中東地域で17万年にわたり生きていたことが確認されているが、今からおよそ3万年前から2万8000年前の時期に突然、絶滅した。この理由をめぐり研究者の間で現在も激しい論争が展開されている。

 突然の寒波で絶滅したという説もあるが、最近の研究では、原生人類がネアンデルタール人を絶滅させたという説もある。

 その仮説はさらに2つに分かれていく。食料と生息地をめぐり争った結果、優れた石器と武器を持つ現生人類に滅ぼされてしまったという説。もう1つは、2つの種は共生し、交配を繰り返すなかで、弱くて、数も少なかったネアンデルタールは独自の種としては消滅してしまったという説だ。(c)AFP/Marlowe Hood