【9月21日 AFP】(一部更新)チェコの首都プラハ(Prague)にあるチェコ国立図書館(Czech National Library)で20日から、俗に「悪魔のバイブル」と呼ばれる聖書の写本が一般公開されている。
 
 この写本の正式呼称は「ギガス写本(Codex Gigas)」。世界最大の中世文書で、624ページにわたるこの書物の重さは75キロ。書物内に描かれた悪魔の絵とその執筆者の伝説から「悪魔のバイブル」と名付けられている。中世時代には「世界の8番目の不思議」と考えられていた。

 13世紀に現在のチェコ中央部Pozlaziceにある修道院で、ある僧侶がこの写本を作製したと伝えられている。伝説では、その僧侶は重罪を犯したとして幽閉されたため、この写本を一晩で作り上げることで、修道院に栄光をもたらし自らの罪を消し去ってもらおうと考えた。ところが、そのためには悪魔の助けを請わなければならず、その援助への感謝として、書物内に悪魔の絵を描き込んだとされている。

 その修道院は15世紀の戦争で破壊されたが、この書物は戦火をかいくぐり、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世(Rudolph II)のコレクションの一部となる。その後、30年戦争(Thirty Years War、1618~1648年)の際にスウェーデン軍に略奪されていた。

 このほど359年ぶりに公開されたこの書物は、チェコ、スウェーデン両国政府の長期にわたる交渉の末、プラハに貸し出されたという。今回の展示に際し、この書物が非常に貴重なものであるため、スウェーデン側の所有者は万が一に備え、通常の保険ではなく3億クローナ(約52億7000万円)の政府保証を求めたと、チェコ国立図書館のVlastimil Jezek館長は話している。「話し合いの間、スウェーデン側の交渉者の顔には、『チェコに貸したら、ちゃんと戻ってくるのか?』という疑問が浮かんでいました」と、Jezek館長は疲れた笑顔を見せて語った。

 写本の展示期間は4か月間の予定。チェコ国立図書館内に作られた特別設計の安全な展示場所で展示されている。見学者は10人ずつ、数分間だけこの稀少な書物を間近にみることができる。(c)AFP