【9月12日 AFP】ベトナムでは食品の安全性に関する不祥事が相次いでいる。果物や野菜から危険な農薬が、しょうゆから発がん性の化学薬品が、郷土料理のフォーからはホルムアルデヒドが検出されている。

 にぎわうハノイ(Hanoi)のXanh市場で生鮮食品を見ていた女性も顔をしかめる。一連の不祥事により、家族に食べさせるものが安全かどうか心配するようになったという。

 主婦であるその女性は「なにを買えばいいのか。すべての食品が新鮮でよいものに見えるけど、それが家族にとって安全かどうか分からない」と困惑する。

 人口約8400万人のベトナムの消費者は、おいしくて健康にもよい郷土料理を長い間誇りに思ってきた。典型的なベトナム料理は、市場で仕入れた多種の新鮮な材料が使われ、野菜が多く、脂肪類が少ない。

 ベトナムは、農業従事者が全人口の4分の3を占める農業国だが、工業化や市場主導型経済への転換が進んでおり、多量の農薬使用によって食への不安が急激に高まっている。

 国営の植物検疫局が行った最近の調査では、ハノイ市内の市場で検査した野菜の30-60%から農薬が検出された。検出された農薬には、中国、香港、韓国および米国で発生した健康被害との関連を指摘されている殺虫剤メタミドホスなど、国内外で使用が禁止されているものも含まれていた。

 ベトナムや隣国の中国では、生産高を上げるため、健康に害を及ぼすと知りながら化学肥料や農薬が大量に使用されている。

 自身が栽培した野菜を販売しているある女性は、「わたしが毎日市場で売っている野菜を、わたしの家族は食べない。自分たちの分は庭で自然栽培している。化学物質が家族の健康を害することを懸念している」と語った。

 国連食料農業機関(UN Food and Agriculture OrganisationFAO)が最近実施したパイロット計画の結果から、主な害虫であるトビイロウンカの移動状況を電子機器で調べてトビイロウンカの襲来直後に稲を植えた場合、殺虫剤を使用しなくても3週間後の次の襲来に対する耐性ができることが分かった。

 これにより、FAOはメコン・デルタ(Mekong Delta)の米作農家が農薬の使用をやめることを期待している。「ベトナムは長い間、自然な害虫駆除で害虫管理を行ってきた。このことは現在の農業従事者も忘れてはならないことだ」

 だが、FAOによると、販売員などからの圧力にさらされた農業従事者が、再度化学薬品を使用するようになる傾向があるという。

 また、状況改善に向けたこのような取り組みや政府の公約にも関わらず、懐疑的な見方は拭えていない。ある女性は「政府を信用していない。口ではたくさんのことを言うが、何も実現されていない。自分で自分自身と家族を守らなければならない」と述べた。

 ベトナムでは、ほかの食品に関する安全性の問題も生じている。マスコミもその問題に対する攻勢を強めており、多くの国民が食の安全に対する懸念を募らせる結果となっている。(c)AFP/Tran Thi Minh Ha