【9月12日 AFP】中東各国のイスラム教徒らは、それぞれに治安悪化やインフレなどの難題を抱えるなかでイスラム教の断食月「ラマダン(Ramadan)」を迎える。

 イスラム暦の9月に行われるラマダンは、各国の聖職者が月の満ち欠けからその年のラマダン開始日を決定する。国によって開始日がずれることもある。

 ラマダン月の1か月間、イスラム教徒は、日の出から日没まで飲食や性行為などを慎む一方、日没後の食事「イフタール(iftar)」や日の出前の食事「スフール(suhur)」を盛大に楽しむ。

 エジプトのカイロ(Cairo)では、物価高騰にもかかわらず
ラマダンの数週間前から、伝統的なラマダン期間中の食事となるナツメヤシの実やミルクなどが飛ぶように売れている。

 180万の人口を抱えるカイロは常態化した交通渋滞で有名だが、ラマダン期間中は交通事故が増加するという。「イフタール」の食事に間に合うよう家路を急ぐ車両が殺到し交通事故が多発するためだ。この期間中、交通整理を行う警察官は休憩時間を取ることはできない。また、拘留所の看守も増員される。

 イラクのバグダッド(Baghdad)では、400年の歴史を持つショルジャ(Shorja)市場が、砂糖やスパイス、茶葉、ナッツ類を買い求める市民で連日賑わっている。国内の治安悪化を反映し、これらの品物のほとんどが、隣国シリアからの輸入品だ。

 同市場を訪れた主婦の女性は「ショルジャ市場でのラマダンの買い物はバグダッド市民の伝統。爆弾テロを恐れてやめることはできない」と語る。

 バグダッドの駐留米軍によれば、ラマダン前の暴力行為等は前年に比べて減少傾向にあるという。

 イラク治安担当高官は10日、バグダッドでの夜間の外出禁止令および車両進入禁止令をラマダン期間中は解除すると発表した。

 一方、パレスチナ自治区のガザ(Gaza)地区は、6月にイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)がパレスチナ解放機構(PLO)主流派のファタハ(Fatah)を同地区から追放して以来、初めてのラマダンを迎える。

 同地区では、ハマスが禁じる路上での日没の祈りを呼びかけるファタハ支持者らと対抗勢力との間で抗争が続いている。
  
 イスラエルのエフド・オルメルト(Ehud Olmert)首相がパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス(Mahmud Abbas)議長との10日の会談で、ラマダン中の善行の一環としてパレスチナ人収監者の解放を約束したことは、明るい話題と言えよう。(c)AFP/Jailan Zayan