【9月8日 AFP】3日間の日程でオーストリアを訪問中のローマ法王ベネディクト16世(Pope Benedict XVI)は滞在初日の7日、ウィーン(Vienna)で、妊娠中絶を「人権の対極」だとして非難する演説を行った。

 大統領府の置かれているホーフブルク(Hofburg)王宮で政府関係者や各国外交官を前に法王は、「基本的人権は、他のすべての権利に先立つものであり、生存権そのものである。このことは、受胎した瞬間から命が自然に終わりを迎える時まで、真理である。そのため、妊娠中絶は人権であり得ない。妊娠中絶は人権の対極に位置するものだ」と述べた。

 法王は、「声を上げることができない、産まれることのなかった胎児」を代弁するとして、各国政府に妊娠中絶を合法化しないよう求めると同時に、子どもが「重荷」ではなく「神からの贈り物」だと受け止められるような、喜びと信頼のある生活環境作りを訴えた。

 法王はまた、「終末期の苦痛への適切な対応、愛情のこもった介護と、死への旅に付きそうことであって、『積極的に死を手伝う』ことではない」と語り、安楽死問題に取り組む社会、医療改革の必要性を訴えた。

 この演説はハインツ・フィッシャー(Heinz Fischer)大統領との会談後に行われたもので、欧州キリスト教徒のアイデンティティーについても強調した。

 法王は、9日に聖シュテファン大聖堂(St. Stephen’s Cathedral)でミサをささげ、ハイリヘンクロイツ(Heiligenkreuz)でシトー派の修道院を訪問した後、バチカンに戻る予定。(c)AFP