【9月4日 AFP】パナマで3日、総事業費52億5000万ドル(約6000億円)を投じて行われるパナマ運河(Panama Canal)拡張工事の開始を記念する式典が開催された。

 拡張工事が完了すれば、全長80キロメートルのパナマ運河の収容能力が倍増するという。同運河は、1904年から1914年までかけて米国が建設し、同国によって管理されていたが、1999年12月、パナマに返還された。

 10年がかりの拡張工事の着工を記念して開かれた同式典へは、ジミー・カーター(Jimmy Carter)元米大統領のほか、米州機構(Organization of American StatesOAS)のホセ・ミゲル・インスルサ(Jose Miguel Insulza)事務総長、エルサルバドルのエリアス・アントニ・サカ(Elias Antonio Saca)大統領、ニカラグアのダニエル・オルテガ(Daniel Ortega)大統領が出席した。

 運河拡張計画には、大西洋側と太平洋側での第3閘門建設が含まれており、完了すれば、現在パナマ運河を航行できない超大型のコンテナ船や客船、石油タンカーなどが航行可能となる。

 現在パナマ運河を利用している最大船舶が積載しているコンテナ数は最大5000個だが、積載コンテナ数が1万2000個の超大型船も運航可能になるという。

 今年は、1977年に、当時のカーター米大統領と、マルティン・トリホス(Martin Torrijos)現パナマ大統領の父で、当時パナマで国政の実権を握っていたオマル・トリホス(Omar Torrijos)将軍が、運河をパナマの管理下に置く根拠となった条約に署名してから30年目にあたる。

 トリホス大統領が国民に対して条約締結を記念した公式行事への出席を呼びかけたため、3日には学校や政府機関が閉鎖された。

 政府当局および地元メディアによれば、ハリケーン「フェリックス(Felix)」の接近で悪天候が予測されていたにも関わらず、約5万人が記念行事に出席したという。

 大西洋と太平洋をつなぐパナマ運河を航行する船舶は年間約1万4000隻。世界貿易の約5%が同運河を通じて行われていることになる。

 パナマ経済の約80%が、運河と関係しており、国内総生産(GDP)の80%にあたる約60億ドル(約7000億円)が運河関連となっている。パナマ運河の主な利用国は米国、中国および日本だ。

 現在、パナマ運河を通航できない大型の船舶、いわゆる「ポストパナマックス船」は、大西洋と太平洋を行き来するために、南米南端のホーン岬(Cape Horn)を回る航路をとらなければならないが、第3閘門の建設により、長さ366メートル(1200フィート)、幅49メートル(160フィート)、喫水15メートル(50フィート)の大型船舶がパナマ運河を通航することが可能になる。

 パナマ政府によると、拡張工事の費用は通航料金の値上げでまかなわれる予定。2005年の通航収入は約12億ドル(約1400億円)。同工事によって、直接的には7000人、間接的には3万5000人の雇用が創出されるという。(c)AFP/James Aparicio