【8月21日 AFP】(8月23日一部更新)イラクの首都バグダッド(Baghdad)のイラク高等法廷で21日、1991年のイスラム教シーア派(Shiite)住民大量虐殺事件をめぐり、人道に対する罪に問われている故サダム・フセイン(Saddam Hussein)元大統領の側近15人を被告とする裁判の初公判が行われた。

 15被告には、フセイン元大統領のいとこで元国防相の「ケミカル・アリ」こと、アリ・ハッサン・マジド(Ali Hassan al-Majid)被告も含まれる。同被告については、1980年代後半のクルド人虐殺事件(アンファル作戦)における人道に対する罪により、すでに死刑判決が下されている。

 イラク高等法廷は、旧フセイン政権による罪を裁くため米国支援のもとに設置された。これまで1982年に中部ドジャイルで起きたシーア派住民虐殺事件およびクルド人虐殺事件の審理を担当してきた。

 シーア派住民大量虐殺事件は、米軍によりイラク軍がクウェートからの撤退を余儀なくされた湾岸戦争直後の1991年、フセイン政権の求心力低下の隙を突き南部で蜂起したシーア派住民が最大で10万人、組織的に虐殺されたといわれる。

 10万人のシーア派住民は、聖地ナジャフ(Najaf)、カルバラ(Karbala)、ヒッラ(Hilla)、バスラ(Basra)で旧フセイン政権が派遣した軍の武装ヘリコプターなどの攻撃を受け、虐殺されたという。当時は米軍が、南部地域での飛行禁止を解除していたといわれる。

 21日に始まった公判では今後、約90人の被害者ならびに目撃者が証言台に立つ。そのほかにも、テープによる記録、事件発生後の報告書などが証拠として使用されるが、虐殺指示が明記された文書などは旧フセイン政権が廃棄を命じたためにほとんど存在しない。

 15被告に含まれるSultan Hashim al-Tai元国防相、作戦の副指揮官だったHussein Rashid al-Tikriti被告の2人には、マジド元国防相同様、すでにクルド人虐殺の罪で死刑判決が宣告されている。

 残る12被告は以下のとおり。

Abd Hamid Mahmoud Al-Nassiri被告
Ibrahim Abdul Sattar Muhammad Al Dahan被告
Waleed Hamid Tawfeeq Al-Nassiri被告
Iyad Ftiyah Khalifah Al-Rawi被告
Sabaawi Ibrahim Al-Hasan被告
Abdel-Ghafour Fleih Al-Ani被告
Ayad Taha Shihab Al-Duri被告
Latif Maal Hamood Al-Sabaawi被告
Qais Abdul Razaq Muhammad al-Adhami被告
Sabir Abdul Aziz Hussain Al-Duri被告
Saadi Tu’ma Abbas Al-Jaburi被告
Sufyan Maher Hasan Al-Ghreri被告

 マジド、al-Tai、al-Tikritiの3被告の死刑判決については、現在、上訴審が行われており、間もなく裁定が下される見込み。国内法により、上訴審で死刑判決を支持する判決が下された場合、30日以内に刑が執行される。

 2003年4月に失脚したフセイン元大統領は、1982年のシーア派住民虐殺事件における人道に対する罪で死刑判決が下され、2006年12月30日に刑を執行された。

 1982年のシーア派住民虐殺事件、1980年代後半のクルド人虐殺事件のいずれの裁判についても、法にのっとっていないとして国際社会から批判の声があがっているが、米国は一貫してイラク高等法廷を支持する立場を表明している。(c)AFP/Jay Deshmukh