【8月19日 AFP】雪のブロックを積み上げたイヌイットの簡易住居、「イグルー」をかたどった最後の建築物が、カナダ極北部で取り壊されることとなった。このドーム型のイグルーは、27年間ファミリーレストランとして使われていたが、北極地域における経済活動の活性化を受け、土地を明け渡すこととなったという。跡地にはオフィスビルが建設されるという。

■取り壊しを惜しむ地元の声

 取り壊されるKamotiq Innレストランとその土地は、今年5月にエドモントン(Edmonton)に拠点を置くホテル経営者によって購入されており、今後数か月の間に、4645平方メートルのオフィスビルが建てられる予定となっている。

 北極圏からわずか200キロの距離にあるイカルウィット(Iqaluit)中心部にあるこのレストランは、現存する最後のイグルー型建築物。イグルーをモチーフにした建物はカナダ北部で1950年から1960年にかけて人気を博した。

 Kamotiq Innレストランが建てられたのは1980年。地元のSuzie Michaelさんによると、イグルーの形に魅せられた学校教師の夫婦2人が地元民の助けを借り、一般的な建築材料を使って建てた。2人の元教え子のSuzieさんも大工仕事や塗装作業を手伝ったという。

 Suzieさんの父親のSimonie Michaelさんも、「子供の頃は本物の雪のイグルーに住んでいたんだ。その頃を思い出すよ」と、ランチメニューのホッキョクイワナを食べながら思い出を交えて語り、「温かいもてなしと食事にビールがなくなってしまうことを残念に思っている」と続けた。Simonieさんは、開店以来ほぼ毎日ここで食事をしているという。

 一方、もうすぐ職を失ってしまうレストラン店長のBrian Czarさんは、「時代は変わっており、北もどんどん開けていく。イカルウィットの街が活性化すれば、不動産の需要が高まるのは仕方がない」と語る。

■海底資源を巡る領有権争い

 科学者らの予測によると、大西洋から北極海沿いのカナダ群島地帯を抜け太平洋に至る「北西航路(Northwest Passage)」は、地球温暖化による海水温度の上昇で2050年までには通年航行が可能になると見られており、北極圏をめぐる領土争いは一層過熱しつつある。

 ロンドンから東京までの運行距離が5000キロ縮まる計算だ。

 海底に未採掘の石油や天然ガス(世界の25%)が埋蔵されているとみられている北極圏のテリトリーを主張するのはカナダだけではなく、ほかに米国、ロシア、デンマーク、ノルウェーが領有権を争っている。(c)AFP/Michel Comte