【8月13日 AFP】群衆の面前を全裸で走り回る「ストリーキング」行為は英国でときおり発生するが、このたび、この行為に画期的な判決が下された。

■法律違反ではない

 スポーツイベントで自らの裸体をさらすことで、「反社会的行動禁止命令(ASBO)」に違反したとして訴えられていたストリーキング常習者のマーク・ロバーツ(Mark Roberts)さん(42)に、リバプール(Liverpool)の裁判所は7日、ストリーキングは同命令の違反ではなく「公衆の面前で衣服を脱ぐ行為を禁じる根拠はない」との判決を下した。

 ロバーツさんはこれまで、ゴルフのライダーカップ(Ryder Cup)、サッカーのUEFA杯(UEFA Cup)およびヨーロッパチャンピオンズカップ(European Cup)の決勝、アメリカンフットボールのスーパーボウル(Super Bowl)、イタリアの冬季五輪など大規模なスポーツイベントを狙ってはストリーキング行為を繰り返し、2006年のゴルフ全英オープン選手権の最終ホールで、反社会的行動禁止命令(ASBO)に違反したとして訴えられていた。

 弁護士は、ロバーツさんはこれまでに380回のストリーキングを繰り返してきたが、2006年の行為は反社会的行動にあたらないと主張し、「ロバーツさんはこれまでの考え方を改め、自分のストリーキングに不快な思いをする人もいることを受け入れて、しかるべき部分は覆っていた」と主張。

 公判でニック・サンダース(Nick Sanders)裁判長は、「ロバーツ氏の行為は人をいら立たせるものだったかもしれないが、わたしの意見では、反社会的行動には当たらない」と述べた。

■ストリーキングのプライド

 この判決を受けたロバーツさんはAFPに対し、「わたしを反社会的行動で訴えるのは非常にばかげている。それとは正反対に、わたしは人を楽しませようとしているのだ」と語り、判決は「笑いを愛する英国人の勝利」と宣言した。

「ユーモアと正義が堅苦しい建前主義に打ち勝った。14年間、ストリーキングを続けているが観衆からブーイングを受けたことはない。ブーイングを受けたときは、わたしがストリーキングをやめるとき」とロバーツさんは意気軒高。

■1つの伝統

 英国では特に暑い夏などに、思わぬストリーキングに出くわすことはさほどまれではない。

「ゴディバ夫人(Lady Godiva)が重税に苦しむコベントリー(Coventry)の人々を救うために、裸で馬に乗って町中を回って以来、英国人はストリーカーに親近感を抱いている」という論評を載せたのは英国の高級紙インディペンデント(Independent)。

■神出鬼没の裸体男性
 
 スポーツイベント以外で最も強い印象を残すストリーキングは米国で発生した。1974年のアカデミー賞(Academy Award)授賞式の際、英国人俳優のデビッド・ニーブン(David Niven)さんの背後からVサインを掲げた裸の男が登場した。

 ニーブンさんはとっさに「この男が笑いをとれるのは、服を脱ぎ捨て欠点をさらす場合に限ります」とウイットに富んだコメントでその場を切り抜けた。

 有名人によるストリーキングもある。英国スコットランド出身のコメディアン、ビリー・コノリー(Billy Connolly)さんは2001年、チャリティーイベントの一環として、裸でロンドンのピカデリーサーカス(Piccadilly Circus)周辺を走り回る様子がテレビで放映され、1200万人がこれを視聴した。(c)AFP/Michael Thurston