アンデスのチチカカ湖で進む汚染
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【8月7日 AFP】ボリビアとペルーにまたがるチチカカ湖(Lake Titicaca)はアンデス山脈の高地にある湖として知られるが、汚染が進み、そこから生活の糧を得てきた住民の生活が危機にひんしている。
海抜3800メートルに位置し、船舶が航行する湖としては世界でもっとも高い場所にあるチチカカ湖は、13世紀から16世紀にかけて南米を支配してきた古代インカの住民の崇拝の対象だった。
しかし、現在は5本の支流を通じ都市部から流れ込むゴミや汚染物質が湖底に蓄積し、湖を汚染している。
チチカカ湖畔の村Cohanaも、もはや「地上の楽園」ではない。乾期になって湖の水が引くと、空き瓶や空き缶、プラスチック製の袋、使用済みの薬品、擦り切れた衣服など大量のゴミが姿を現す。
Cohanaの350世帯の住民は食料や飲料水を湖から得てきたが、その生活が危機にひんしている。
汚染の報告をうけた保健省は2006年6月、専門家の調査団を派遣。その結果、Cohanaの水辺にはバクテリア、ウイルス、寄生虫などの病原体が存在する可能性があり、チチカカ湖でもっとも汚染された地区と認定された。
報告書は「水中の酸素不足が生物に直接の影響を与え、どこにでも存在した魚が死滅し、かつてアシの間を泳ぎ回っていた魚の群れがいなくなるという厳しい現実に、我々は直面している」と結論付けた。
汚染は大地や水にまで及び、Cohanaの素朴で平和な生活様式は大きく変わり始めている。15年前には湖の水を直接飲んでいた住民も、今は2つの井戸に頼らざるをえない。
水質汚染の影響は家畜にも及んでいる。寄生虫に冒された家畜は肝臓を肥大させ、死には至らないものの体重が減り、ミルクを出す量が減少する。チーズを作って得ていた収入も減ってしまった。
Cohanaの住民はこうした運命に、半ばあきらめの気持ちを抱いている。大地が乾燥し、牛がやせ細るにつれ、すでに数百人が仕事を求めて2250キロも離れたアルゼンチンのブエノスアイレス(Buenos Aires)へと旅立った。(c)AFP/Jose Luis Varela