【7月17日 AFP】パリ(Paris)で15日、市民や観光客を対象にしたレンタル自転車事業「ベリブ(Velib)」が始まった。市内各所に設けられたサイクルポートで一定料金を支払い自転車を借りられるサービスで、開始早々「売り切れ」のサイクルポートも続出するなど好調な滑り出しとなった。

「ベリブ」はフランス語の「velo(自転車)」と「liberte(自由)」を組み合わせた造語。広告大手ジェーシードゥコー(JC Decaux)がリヨン(Lyon)で実施し成功を収めた事業だ。パリでは同社が経費を負担するのと引き換えに、市内1600か所に広告掲載する権利を獲得した。

 ヨーロッパではすでに、バルセロナ(Barcelona)、ジュネーブ(Geneva)、ストックホルム(Stockholm)、オスロ(Oslo)、ウィーン(Vienna)といった大都市で、「交通量を減らし、大気を汚染せず、しかも楽しい乗り物」としてメトロの代わりにレンタルサイクル制度を導入しており、パリはこれに続くかたちとなった。

■年末までに20万人の利用見込む

 同日パリ市中心部で開かれた開始記念式典で、ベルトラン・デラノエ(Bertrand Delanoe)市長は、「(ベリブは)パリを愛する人にさわやかな空気と、ささやかな発明と、そして名前が表わすようにたくさんの自由をもたらすだろう」と語り、市民や観光客に対し、交通渋滞知らずで環境に優しい自転車でセーヌ川沿岸をめぐり、ルーブル美術館やエッフェル塔観光を楽しんで欲しいと呼びかけた。

「ベリブ」で使用される自転車は、いたずら防止用の設計により通常よりも多少重量があり、発電器付きライトと大きなかご、そして鍵がついている。

 開始からわずか数時間で市内のあちこちでグレーの大ぶりの自転車を目にすることができた。市当局によると、午後も1万5000台がレンタルされたという。すでに約1万3000人が年間パスを登録している。

 市当局は、年末までにはサイクルポートを現在の750か所から1451か所、レンタルサイクルの台数を2万600台に拡大する計画で、それまでに少なくとも20万人の利用を見込んでいる。

 また、デラノエ市長によれば、現在371キロの市内の自転車用道路を年内に20キロ延長する計画だという。

■安全面に課題

 このサービスの最初の利用者50人のうちの1人、Quirin Hampさん(28)は、レンタル自転車は「パリ市民の生活を変える」という。「パリで自分の自転車を持つのは問題が多くて難しい。このシステムを利用すれば、完ぺきな状態の自転車にいつでも乗れる」

 これまで3台の自転車を盗まれたため、自転車に乗るのをあきらめていたGilbert Arigonさん(63)は、「このシステムは公共交通に代わる新たな選択肢だ。天気がいい日はメトロやバスの代わりに自転車を使えば最高だよ」と笑った。

 オフィスで働くNadine Vellutさん(43)は、安全面で不安はあるが「ベリブ」に大いに期待しているという。「今後ドライバーは、サイクリストに注意することを学ばなければいけないでしょうね。でも、レンタル自転車はメトロのストライキを避けるにもいい方法だわ」

 生物学者のClotidle Randriamanpitaさん(44)は、「意識改革が必要だ。パリに自転車が増えれば、市当局に専用道路を作るよう圧力がかかり、自動車を運転する人も自転車に慣れていくと思う」と見る。

 安全面については市長も懸念しており、警察当局が交通違反を厳しく取り締まることになるだろうと述べた。「ベリブ」利用者には、「模範的サイクリスト」――パリのサイクリストは交通ルールを軽視しがちだ――としての注意事項が伝えられている。

 利用にはパスが必要になる。1年間パスは29ユーロ(約4800円)、1日パスは1ユーロ(約170円)、1週間パスは5ユーロ(約840円)で、クレジットカードでの支払いもできる。短時間利用で回転を増やすため、利用料金は最初の30分が無料、次の30分が1ユーロ、以降は30分毎に2ユーロとする累進課金制度を採用した。(c)AFP/Carole Landry