【6月18日 AFP】2008年に行われる大統領選挙に向けた長期戦は、候補者たちの失敗や言動の暴露から、果てはアダルトビデオ風の映像まで、過去の大統領選にはなかった浮かれ騒ぎが過熱する様相を見せつつある。

 悪ふざけの筆頭は、民主党の有力候補バラク・オバマ(Barack Obama)氏を登場させたビデオ。「オバマガール」を名乗る女性がビキニ姿で、「わたしはオバマにもう夢中。2008年が待ちきれない。ヒラリーとの討論会で熱くなったあなたってステキ」と歌って踊る。

 音楽といえば、堅いイメージだったヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)候補は、音楽に合わせ、トランス状態に入ったように体を揺らす姿をサイト上で披露。一方、共和党のジョン・マケイン(John McCain)候補は支持者の集会で調子に乗り、ビーチボーイズ(Beach Boys)の「バーバラ・アン(Barbara Ann)」の替え歌で「イランを爆撃、爆撃、爆撃、爆撃」と口ずさんだ様子をビデオにとらえられた。

■インターネットで増殖する「映像」

 こうした映像の一部は動画共有サイト、ユーチューブ(YouTube)人気の産物でもある。掲載されている動画はコンピュータさえあればどこからでも閲覧可能で、選挙運動に新しい局面を開いたともいえる。

 オバマ候補が主役にされたビデオも、ユーチューブに掲載された。ハワイでサーフィンという設定のオバマ候補の「筋骨たくましい」写真の横で、モデルのアンバー・リー・エッティンガー(Amber Lee Ettinger)さんが口パクで歌い踊るこの映像は、その後ケーブルTVでも放映された。もちろん、選挙運動のために作られたわけではない。

 どんな話題でも、評判にさえなれば候補者宣伝になるのかもしれない。しかし、世論調査機関「ピュー・インターネット・アンド・アメリカン・ライフ・プロジェクト(Pew Internet and American Life Project)」で大統領選とインターネットの関連を調査するリー・レイニー(Lee Rainie)氏は、ネット上のビデオはウイルスのように増殖するため、候補者にとって懸念材料になると指摘する。

 レイニー氏は、「候補者は、自分の選挙運動に人々がかかわってくれることはうれしいだろうが、伝えたいメッセージをコントロールするのは極めて難しい」と語る。モデムとビデオカメラさえあれば誰でも、候補者が選挙戦で見られたくない姿を撮影できてしまうという。

 候補者公認の広告と、単に人々の想像をかきたてる素材として候補者の映像が使用された場合の境界もあいまいだ。

■紙面での「すっぱ抜き」も

 イラク問題や妊娠中絶、医療保険制度をめぐり候補者が火花を散らす中、彼らの威厳を揺るがすのはインターネットだけではない。

 ニューヨーク前市長のルドルフ・ジュリアーニ(Rudolph Giuliani)候補は2006年末、共和党の候補者指名を勝ち取るための戦略構想について記した140ページの文書をニューヨーク・デイリーニューズ(New York Daily News)紙にすっぱ抜かれ、面目をつぶされた。

 ジュリアーニ氏は選挙戦で治安対策を打ち出しているが、他候補は同氏がニューヨーク市長時代の2001年9月11日に起きた米同時多発テロにまつわる治安上の過失を挙げつらっている。

 一方、先述の無思慮な「イラン攻撃」の替え歌を歌ったマケイン候補は、インターネットを通じて瞬く間にその映像を広められた。リベラル系の団体「MoveOn.org」は早速、この失態をアンチ広告として採用、「また次も思慮の足りない大統領に任せるわけにはいかない」とスローガンをつけた。(c)AFP/Stephen Collinson