【6月14日 AFP】カトリックでタブーとされてきた火葬をローマ法王庁が許可してから約40年。フランスのカトリック教徒らの間で火葬が急速に広まり、現在では亡くなった信者の4人に1人が火葬に付されている。

■2030年には、約半数の50%の葬儀が火葬に

 人口約6000万人のフランスでの、年間死亡者数は約50万人。この多くは、棺に入れられ土葬される。しかし、「生活条件調査研究センター(CREDOC)」によると、1975年にはわずか1%だった火葬は、年々増加の兆しを見せており、1998年には15%、現在は26%と約4分の1を占めるようになった。2030年には、約半数の50%が火葬になると見込んでいる。

 欧州の各カトリック国の火葬率は、フランスの25%に対し、スペインが12%、イタリアが6%、ポルトガルが2%で、フランスは欧州南部のカトリック国の中で最も火葬率の高い国となった。

 長年禁止されてきた火葬だが、「復活」や「魂の不滅」などのカトリックの教義に火葬は違反しないと判断した、1963年の第2バチカン公会議(Second Ecumenical CouncilVatican II)により許可された。その際、火葬の前に葬儀のミサを行うことが定められた。一方、遺灰については死者に敬意を払うため、遺体同様に埋葬すべきだとされ、遺灰の散布は認めていない。

■「火葬の方が経済的」

 しかし、近年、火葬が増えた原因は、法王庁による解禁よりは、むしろ社会的・経済的な理由によるものと考えられる。

 納棺して土葬にするよりも火葬は経済的なことから、フランスでも不況期には火葬が大流行し、各地の火葬施設数が間に合わない状態になることもあったという。

 一方で、伝統的な家族単位の遺体安置所や地方部の村の共同墓地などは、農村の過疎化と共に消えつつある。

 一方、最近の調査によれば、カトリック教徒と宗旨とする人口は1990年以前の80%から51%にまで激減。教会に通う信者も10%にまで低下しており、宗教離れ自体が進んでいる。

■フランスでは、都市部に高い火葬率
  
 世界で最も火葬率の高い国は日本で、火葬率は99.7%。国内には1665か所の火葬施設がある。フランスはこれに遠く及ばないが、30年前にはわずか7か所だった火葬施設が、現在は120か所にまで増加している。

 フランス国内では、最も火葬率が高い都市はパリで、3人に1人が火葬されている。一方、地方部の火葬率は8%以下と大幅に低くなる。また、アルザス(Alsace)東部など、再臨派(Adventists)と長老派(Presbyterians )を除くプロテスタント教徒の多い地域において、火葬率が高くなる傾向がある。

 プロテスタントで火葬が許可されたのは1898年で、カトリックよりも約50年早い。それまでは火葬は秘密結社フリーメイソン(free-masons)や無神論者の葬儀に限られていた。

 前出のキリスト教2宗派のほか、フランス在住のイスラム教徒40万人、ユダヤ教徒60万人、正教会教徒70万人の間では、火葬はまだタブーとなっている。

■遺灰の行き先は

 統計によると、火葬後の遺灰の71%が家に持ち帰られるほか、21%が墓地の「葬儀の壁」に安置され、8%が墓地内に新設された芝生区域や追悼用庭園などに散布されている。

 フランスは行政上の規則や規定が煩雑なことで有名だが、現在「骨つぼ」に関する法令の法制化に向けた議論が進行中だ。法令案は、自宅で骨つぼを保管する場合は暖炉の上に置き、遺灰を保管している旨を各自治体に届け出ることが義務づけられている。(c)AFP/Chantal Vallette