【6月15日 AFP】米インターネット大手ヤフー(Yahoo)が提供した情報を元に国家機密漏えいの罪に問われ服役中の中国人ジャーナリスト、師濤(Shi Tao)氏の母親が14日、息子の釈放を訴えるため訪米した。

 ワシントンD.Cで、報道の自由を監視する団体「国境なき記者団(Reporters Without BordersRWB)」の同地代表や米国の弁護士と面会した母親のGao Qinshengさんは、「国際的な関心が高まっている。孤立した問題ではなくなった」とAFPに語った。

 師氏は先日、同じくヤフー提供の情報によって逮捕され、国家転覆を扇動したとして2003年に有罪となった王小寧(Wang Xiaoning)氏が、ヤフーと同社香港法人を相手取って起こした人権侵害訴訟の原告団に加わった。米国では訴訟の行方に注目が集まっている。

■いまだタブーの天安門事件

 師濤氏は、中国政府が地元メディアに天安門事件の特集を禁じているとインターネット上で明らかにしたことが国家機密漏えいとみなされ、2005年に懲役10年の判決を受けた。このとき、警察が同氏の身元割り出しに利用したのが、ヤフーが提供した情報だった。

 訪米に先立って9日、香港で記者会見したGaoさんは、「息子はまじめなジャーナリストで、中国政府の犠牲になった」と涙ながらに訴え、ヤフーに対する法的制裁を求めた。Gaoさんによると師氏は厳重な監視下にあり、一見元気そうだが、皮膚病と胃の不調に苦しんでいるという。

 1989年に起きた天安門事件は、中国ではいまだタブー視されており、今週も新聞社の編集長3人が、事件の犠牲者の母親たちに敬意を表する広告を掲載したとして更迭された。政府の公式見解では、事件は経済、社会秩序の維持のために「政治的騒乱」を鎮静したとなっている。

■集団訴訟の可能性も

 Gaoさんの要請で師氏の釈放を訴えるキャンペーンを行っている民主主義活動家のAlbert Ho香港議会議員は、ヤフー提供の情報で逮捕されたジャーナリストや活動家は、ほかに少なくとも4人いると指摘。同社に対する訴訟が集団訴訟となる可能性を示唆している。

 また、「ヤフーは師氏の権利を侵害していない」との判断を下した香港プライバシー・コミッショナー(Hong Kong Privacy Commissioner)に対しても、訴訟を起こしたことを明らかにした。

「形式的な訴訟だが、師氏がヤフーに何らかの賠償を求めているのは事実だ」(Ho議員)

 ヤフー側は、中国での運営には現地の法律順守が必要だという見地から、情報提供を行ったと主張している。(c)AFP/P. Parameswaran