【6月12日 AFP】中国では10億人以上の国民がたった、100の姓を共有している。12日付けの国営紙中国日報(China Daily)によると、政府は混乱を避けるために「姓のバラエティーを増やす法改正」を検討しているという。

■10万人以上が同姓同名

 中国の現行法では、子どもは両親のいずれかの姓を引き継がなければならない。そのため、例えば9300万人が「王(Wang)」という姓を名乗っているのが現状だ。

 4月に全国で実施された中国公安部(Ministry of Public Security)の調査によると、約13億人の国民の85%前後が、たった100の姓を名乗っていることがわかった。9200万人が「李(Li)」、8800万人が「章(Zhang)」、少なくとも2000万人がその他「陳(Chen)」「周(Zhou)」「林(Lin)」など7種類の姓を使用しているという。

 また、中国社会科学院(Chinese Academy of Social SciencesCASS)が実施した別の調査によると、少なくとも10万人が中国で最も一般的な名前「王涛(Wang Tao)」を名乗っていることがわかった。

■法改正で4種類の姓が選択可能に

 中国日報によると、中国公安部が発表した法律草案では、子どもは両親の姓を組み合わせた姓を名乗ることができる。これにより、128万通りの新たな姓が生まれるという。例えば、「周」という父親と「朱(Zhu)」という母親を持つ子どもは、「周(Zhou)」「朱(Zhu)」「周朱(Zhouzhu)」「朱周(Zhuzhou)」の4種類から姓を選択することが可能となる。

 北京市公安局の登録担当者は、「種類の少なさが日常生活に混乱をきたしている」と嘆き、新たな法律により「同姓同名が大幅に解消される」との期待を覗かせた。

 一方、中国社会科学院のDu Roufu氏は、「両親の姓を組み合わせて利用することが、法律上は認められていないにもかかわらず、すでに若い夫婦の間ではこのような姓の選択方法が一般化している」と話す。

■少数民族にはアイデンティティを取り戻す機会に

 また草案では、少数民族に対しては、新たな文字の登録を認めている。ただし、外国文字の使用は禁止される。

 Du氏は、「この法改正は、少数民族が伝統的な名字を使用することを推進することになるだろう。彼らは自らの文化遺産の軽視である『漢字の姓を使用』を避けるようになるだろう」と指摘している。(c)AFP