【5月27日 AFP】現地時間27日に閉幕を迎える第60回カンヌ国際映画祭(60th Cannes Film Festival)と平行して開催されている映画見本市「カンヌ・フィルム・マーケット(Marche du FilmCannes film market)」の今年の目玉は、ホラー映画だった。

■ゾンビもさまざま

 世界各国からさまざまな作品が持ち込まれるこの見本市の会場には、ゾンビのポスターが掲げられた。米映画会社American World Picturesのマーク・L・レスター(Mark L. Lester)氏は「今年はホラー映画がすごい」と語る。

 多くの国から多種多様のホラー映画が出品された。タイの『The Haunted Drum』、日本の『紀子の食卓(Noriko’s Dinner Table)』、米国の『The Kiss of the Vampire』などだ。

 韓国からは、ゾンビのパロディー映画『American Zombie』が出品された。

 カルトホラーを得意とする米国の映画会社トロマ・エンターテイメント(Troma Entertainment)から出品された『Poultrygeist: Night of the Chicken Dead』はコメディタッチのホラー映画。チキンのゾンビを描いた初の映画だというこの作品には、「我々を死に追いやる」米国のファーストフード業界を批判するメッセージが込められている。


■DVDやインターネット効果で人気に

 ホラー作品が主流となりつつある中、見本市に映画を売り込みに来た人々は少なくとも2本以上のホラー映画を持ち込んできた。また現代のホラー作品は、必ずしも低予算映画ではない。

「数年前は、見本市でホラー作品を売り込むのは至難の業だった。だれも興味を示さなかった」と、Artist View Entertainmentのスコット・J・ジョーンズ(Scott J. Jones)社長は語る。

「DVDの出現で、ホラー作品が映画市場の前線に押し上げられ、それが継続している」

 ジョーンズ氏によれば、インターネットのチャットサイトも、ホラー映画の台頭に貢献しているという。こういったサイトの利用者に多い15歳から25歳の世代は、ホラー作品も好むからだ。

■東欧にも進出
 
 さらにホラー作品は、興行成績も良好だ。

「ホラー映画は収益が良い。世界中で人気だから」と語るのはWonderphil Productionのフィル・ゴーン(Phil Gorn)氏。

 ゴーン氏によれば、ホラー作品はWonderphil Productionのセールスの4分の1を占めており、最近の作品では『The Witches Hammer』や『NyMpha』が米国だけでなく日本、マレーシア、シンガポール、インドネシアで売れているという。

 欧米に加え、アジアもホラー映画の大きな市場となった。さらに現在では、ロシアを筆頭に東欧や南米も新しいホラー映画市場となりつつある。 

トロマ・エンターテイメントのインターナショナル・セールス担当者Lisa Borhoum氏は、日本は常に大きな市場であり、ここ4年間でロシアでもホラー作品の人気が出てきたとAFPに語る。

「シンガポールやインドも良い市場になりつつあります」

■東西で異なる傾向

 しかし、主流の作品と違い、ホラー映画は東西でスタイルが違うという。

 今回のカンヌ・フィルム・マーケットでは、多数のアジアの国々が独自のスタイルのホラー作品を出品してきた。これらアジアの作品は特に欧米で人気が高い。

「日本のホラー映画は、欧米とは違うスタイルで人々に恐怖感を与えます」と語るのはEleven Artsのアイダ・カナ氏。

「欧米スタイルのホラー映画はわかりやすいが、日本の作品は、恐怖感をあおる音楽などをあまり使用しない」

 アジア作品のタイトルも欧米ほどあからさまなものではない。

 Eleven Artsの『The Vanished』やタイのPhranakornが出品した『Ghost Mother』は、『Scream Bloody Murder(邦題:女子高生チェーンソー)』や『Midnight Meat Train(邦題:ミッドナイト・ミートトレイン)』よりも、イマジネーションが膨らむタイトルになっている。(c)AFP