【5月26日 AFP】生後18か月のNitishちゃんは母親の腕に抱かれ、だるそうな様子で周囲をじっと見る。その体は干からびたようにやせ細っている。中部マディヤプラデシュ(Madhya Pradesh)州%%
Kolaras%%は乾燥した農業地帯。インド政府が食糧供給を目的に同地に設立したセンターを訪れたNitishちゃんの体はあばら骨が数えられるほどにやせ衰え、黒く輝くはずの頭髪は赤茶けた色をしている。栄養失調の特徴だ。農園労働者の妻である母親のSavitriさん(24)は「息子は下痢のせいで日に日にやせていく」と語る。

 Nitishちゃんと同様に、センターにつれて来られた生後7か月のNiketaちゃんは、祖母から調製粉乳を与えられながら、棒のような腕を振る。母親は難産の末にNiketaちゃんを出産し、2日後に亡くなったのだという。

 祖母のSoniさん(55)は、小さくて人形のようなNiketaちゃんをあやしながら「神は不公平だ。Niketaから母親を奪い、父親はわが子を育てるつもりがないのだから」と語る。

■経済成長にもかかわらず、栄養失調の問題は依然深刻

 政府の発表によれば、現在国内では3歳以下の子どものうち46%が栄養失調に陥っているという。丸々とした幼児の笑顔の写真が貼られたこの部屋に寝かされているNitishちゃんやNiketaちゃんは、そのほんの一部なのだ。

 5年にわたり雨期の降水量不足が続き、黄塵が舞い散るマディヤプラデシュ州の状況はさらに深刻だ。栄養失調に苦しむ子どもが60%にも達し、国内最悪となっている。

 国連児童基金(Unicef)広報担当官のMeital Rusdia氏は「これは静かな緊急事態だ。子どもたちが徐々に姿を消していく」と危機感を募らせる。

 過去4年間、平均8.5%の経済成長を遂げてきたインドだが、栄養失調の問題は依然深刻だ。「小児死亡率」や「体重不足の子どもの数」をはじめとする基本医療水準を示す指標は、過去7年間でほとんど改善されていない。

 People’s Health Movementメンバーの小児科医、Vandana Prasad氏は「経済がめざましい成長を遂げているにもかかわらず、50%近くの子どもが飢えに苦しんでいるのは恥ずべき事態」と語る。

 Unicefも政府の開発投資が「不十分」と批判する。

■国の将来をも脅かす栄養失調

 インドの歴史につきまとってきた飢餓の問題こそ解決されたものの、「家庭レベル」での食糧安全保障は達成されていない状態だ。

 現在、数百万人の国民は、小麦、レンズ豆、米といった最低限の基本食品を常食としている。貧しい公衆衛生や栄養不良、無計画な予防接種によって国民の感染症に対する抵抗力が弱まり、子どもが最大の被害者となっている。

 このような状況を受けて政府は、6歳以下の子どもを対象にした保育所、「anganwadis」を設立した。政府が栄養失調対策を目的とした施設を開設するのはこれが初めて。

 最高裁判所は、すべての6歳以下の子どもに対し無料で昼食を提供するよう命じているが、Citizens'Initiative for the Rights of Children Under Sixは「資金不足」「スタッフ不足」「食糧供給に伴う汚職」といった問題の存在を指摘する。汚職により食糧が不足したり、まったく提供されないことすらあるという。

 18歳以下の人口が総人口の40%を占めるインドにおいて、栄養失調は国の将来に影響する大きな問題だ。「栄養失調のまん延が、潜在的な経済成長を2~4%妨げる」との調査結果も存在している。(c)AFP