【5月24日 AFP】米通信大手AT&Tが6月、アップル(Apple)の新型携帯電話機「iPhone(アイフォン)」を発売する。業界再編への切り込みとなるか、前代未聞の失敗事業となるか、画期的な提携の行方に注目が集まっている。

 iPhoneは、アップルのデジタル音楽プレーヤー「iPod」を搭載した携帯電話。業界筋では、電話の歴史と等しく古い通信企業AT&Tにとって、iPhoneの発売は、インターネット時代にふさわしい「若さ」をもたらすものと評価する。

 AT&Tワイヤレス通信部門の広報担当マーク・シーゲル(Mark Siegel)氏によると、同社にはすでにiPhoneに関する問い合わせが100万件以上、寄せられているという。

 「iPhone」に関心を持つ多くの顧客らが、アップルの巧みなマーケティング戦術に後押しされて、 AT&Tの販売店に足を運ぶとみられるが、iPhoneの価格帯は499ドルから599ドルと他のAT&T機種よりも高く、実際の購買につながるかどうかは未知数だ。

 さらに、AT&TはアップルとiPhoneのキャリアとして長期独占契約も結んでいる。

 しかし、アップルはこれまで、提携相手に痛手を負わせる形で事業提携関係を終わらせるパターンが多い。アップルは当初、携帯電話市場への足がかりとしてモトローラ(Motorola)の携帯電話ROKR(ロッカー)と提携し、「iTunes」を搭載した。AT&T傘下のシンギュラー(Cingular)がキャリアとなる予定だったが、この提携は発表後まもなく撤回された。
 
 アナリストのRob Enderle氏は「アップルは提携相手をずたずたに傷つけた上、屈辱を与えて放り出す前科がある」と厳しい見方を示す。

 また、調査会社ガートナー(Gartner)のアナリストMichael McGuire氏は、AT&T側には、タッチスクリーン操作が可能なiPhoneの画期性に見合った新鮮なサービスプランを提供するというプレッシャーもかかるとみる。

 ジュピター・リサーチ(Jupiter Research)のアナリストNeil Strother氏によると、AT&Tとの提携に際し、アップルはiPhoneの通話方式を、米国以外で普及しているGSM方式とした。 欧州でのiPhone発売開始は今年末、アジアでは2008年となる。

 一方、アップル側は、契約によりAT&Tのライバルである通信大手のスプリント(Sprint)やベライゾン・ワイヤレス(Verizon Wireless)が採用するCDMA対応のiPhoneを開発することはできない。Strother氏は「つまり、アップルの戦略は、通信キャリア1社(AT&T)の動きによって制限されることになる。このことで何が可能で何が不可能かが分かるだろう。アップルには携帯電話分野における経験が浅い。ある意味、アップルは携帯分野では部外者なのだ」と述べた。(c)AFP