【テヘラン/イラン 21日 AFP】第60回カンヌ国際映画祭(60th Cannes Film Festival)に出品されているイランのアニメーション映画『ペルセポリス(Persepolis)』に対し、イラン政府が「政治的行為」と非難、カンヌ映画祭の開催地であるフランスの政府に抗議を表明した。

 同作品はイラン人漫画家マルジャン・サトラピ(Marjane Satrapi)が自身のベストセラー作品を基に、フランス人イラストレーター、ヴァンサン・パロノー(Vincent Paronnaud) と共同制作したモノクロのアニメ映画。イラン革命初期、権威と闘う少女の成長を描き、今年度のパルムドール(Palme d’Or)に最も近い作品といわれている。

 イラン国営通信は21日、駐テヘラン仏文化大使に宛てられた国営ファラビ・シネマ財団(Farabi Cinema Foundation)の書簡を公開した。書簡には「カンヌ映画祭は、イラン革命の成果について虚偽の姿を描いた映画を選んだ」と記され、「この映画が選考されたことを、映画祭側の政治的さらには反文化的行為と考えずにいられるだろうか?」と映画の選考自体に疑問を唱えている。ファラビ・シネマ財団は、文化・イスラム指導省下でイラン映画の普及や全世界における同国映画のマーケティングを担当している。

 書簡はさらに、今年のカンヌ映画祭で選考されたイラン映画は『ペルセポリス』のみで、同映画祭の主催者が「イランに敵対する横暴な勢力の偏見に満ちた方針に従い行動している」と糾弾している。『ペルセポリス』はすでに20言語以上に翻訳され、いくつかの賞も受賞している。カンヌ映画祭では23日にプレミア上映が予定されている。

 反抗的な8歳の主人公の少女はサトラピ監督自身の分身ともいえ、シャー(パーレビ2世)の追放から、1979年のイラン革命によるイスラム共和国宣言までを体験する。監督自身はイラン・イラク戦争の恐怖を経て国外脱出するが、避難先のオーストリアですぐに亡命者としての孤独に悩まされた。現在はフランスに住み、2000年に全4巻の初著作である『ペルセポリス』を発表した。しかし、出版物を厳格に事前検閲し、退廃的だとみなした書物やイスラム法の価値観にそぐわない「反イスラム的」書物だと判断した場合には出版を禁じるイランでは、『ペルセポリス』は一度も発表されていない。

 イランでは今年3月にも、紀元前5世紀にギリシャと戦ったペルシャ戦争を描いたハリウッドのヒット作『300(スリーハンドレッド)』が非難の的となり、政府内のみならずネット上でも反発が広がった。イラン当局は同映画を「アメリカ人のイランに対する心理戦」だと批判していた。(c)AFP/PASCAL GUYOT