【カンヌ/フランス 20日 AFP】カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)を盛り上げてきたテーマの1つが政治だが、60回目を迎える今年も、開幕早々に政治的なテーマの作品が話題を集めた。

 2004年に「華氏911(Fahrenheit 9/11)」で最高賞「パルム・ドール(Palme d’Or)」を獲得したマイケル・ムーア(Michael Moore)監督と、環境問題についてのドキュメンタリー映画を製作・公開した俳優のレオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)が、この週末、映画で自らの主張を訴えた。

 肥大した民間企業が横行し機能不全に陥った米国の医療制度を厳しく批判した最新作、「シッコ(Sicko)」を出品したムーア氏は、メディアの前でジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領への批判をますます強めている。

 同作品はブッシュ大統領だけでなく、米国の政治家は大企業から買収されているとこき下ろし、欧州各国でうまく機能している「社会主義的」な保険制度を米国が拒否している現実を嘆く。

 一方、ディカプリオは「The 11th Hour」を出品。前年のカンヌに出品されたアル・ゴア(Al Gore)米元副大統領の「不都合な真実(An Inconvenient Truth)」のような作品を期待していた批評家らは失望したが、ディカプリオ自身はレポーターを捕まえては環境問題について議論している。

 両作品ともコンペ部門への出品ではないが、コンペ部門にも政治的なメッセージを前面に打ち出した作品は多い。

 「4 Luni, 3 Saptamini si 2 Zile(4か月3週2日の意味)」は、中絶が禁じられていたチャウシェスク独裁時代のルーマニアで起こった恐ろしい出来事を通じ、共産主義体制のもとで抑圧された人々の苦しみを描き、女性の権利を訴えている。クリスチャン・ムンギウ(Cristian Mungiu)監督は、作品に込めたメッセージはシンプルだと語る。
 「恐怖は自由を奪うのだ」

 民主化後のルーマニアで中絶が合法化されたことは「究極の自由」に思えたとムンギウ監督は語る。

 フランスのラファエル・ナジャリ(Raphael Nadjari)監督が製作した「Tehilim」は、イスラエルのエルサレム(Jerusalem)を舞台にした家族ドラマだ。一見、政治とは縁がなさそうなストーリーが展開するが、映画が進むにつれ、伝統と進歩、精神性と現実が衝突し、父親像(あるいは、神の姿か)が失われていく世界が観客に示されていく。

 23日には、亡命イラン人でパリに住むマルジャン・サトラピ(Marjane Satrapi)監督が、彼女の祖国における宗教的な抑圧をユーモラスに描いたアニメーション映画「ペルセポリス(Persepolis)」が上映される。この作品はサトラピ監督が描いた人気コミックを映画化したもの。

 写真は19日、コーエン兄弟の「No Country for Old Men」の上映に合わせフェスティバル・パレス(Festival Palace)を訪れたディカプリオ。(c)AFP/FRANCOIS GUILLOT