【カンヌ/フランス 20日 AFP】オスカー受賞のコーエン兄弟(Coen brothers)が手掛けた現代アメリカ西部が舞台のスリラー映画『No Country for Old Men』が、パルム・ドール(Palme d’Or)獲得の「本命」として早くも絶賛されている。

 米映画誌バラエティ(Variety) は、「『No Country for Old Men』はコーエン兄弟の最高傑作の一つで、賞賛に値する紛れもない古典だ」と賞賛した。

 ピュリツァー賞受賞者コーマック・マッカーシー(Cormac McCarthy)の小説が原作の同映画は1980年の米-メキシコ国境地帯の荒野が舞台で、家畜泥棒に取って代わって麻薬の売人らが小さな町々を襲っていくというストーリー。 「西部劇という人もいるが、われわれは犯罪映画だと考えている」とジョエル・コーエン(Joel Coen)は記者会見で述べた。

 死体の山と血の海、そして圧搾空気で牛肉を処理する機械を好む病的な殺人者――この作品で描かれる米国西部は、かつての開拓時代よりも無法で野蛮だ。 『ファーゴ(Fargo)』『バートン・フィンク(Barton Fink)』『赤ちゃん泥棒(Raising Arizona)』などの作品で知られ、カンヌのコンペ部門にも過去8回出品しているコーエン兄弟は、この作品に銃や暴力に対する政治的メッセージがあることを否定した。 「われわれは自分達の作品をそのように捉えていない」とジョエル。

「原作をとても気に入っていたから、できるだけ忠実でありたかった」とイーサン(Ethan Coen)は、いつものように兄のコメントに付け足した。 この作品の主な登場人物は、時代の流れに翻弄される真面目で人格者の保安官、根源的な悪の存在として描かれる殺人者、麻薬代金200万ドルが入ったバッグを偶然手にし、人生の歯車を狂わせていくベトナム退役軍人の3人。 クエンティン・タランティーノ(Quentin Tarantino)監督がロバート・ロドリゲス(Robert Rodriguez)監督と企画したイベント・ムービー『グラインド・ハウス(Grindhouse)』に出演したジョシュ・ブローリン(Josh Brolin)演じるベトナム退役軍人がこの不正利得を持ち去ったことで、血に染められた事件の連鎖がはじまる。

 一方、オスカー俳優で『逃亡者(The Fugitive)』や『メン・イン・ブラック(Men In Black)』のトミー・リー・ジョーンズ(Tommy Lee Jones)が保安官役を演じ、『海を飛ぶ夢(The Sea Inside)』のスペイン人俳優、ハビエル・バルデム(Javier Bardem)が不気味なたてがみのような髪形の殺人犯を演じている。

「カンヌでコーエン兄弟と仕事ができるなんて夢にも思っていなかった。あの髪形が気に入ったかって? まさか! あんな格好をさせられたのは、オレが英語を話せないせいだ!」

 ターミネーターのような殺人犯を演じたバルデムは、劇中と同じように目をむいておどけてみせた。

 なお、『No Country for Old Men』には、映画『トレイン・スポッティング(Trainspotting)』で有名なスコットランド人女優のケリー・マクドナルド(Kelly Macdonald)も出演している。今回マクドナルドは、自身のグラスゴー訛りを捨て生粋のテキサス訛りで演じなければならなかったが、撮影開始から「ケリーの国籍はほとんど問題ではなかった」とジョエルは話す。

「最初に彼女の国籍を聞いた時、この役は無理だと思った。だが彼女がテキサス訛りを話すのを聞いたら、『どうやってものにしたの?』という感じだったよ」

『No Country for Old Men』はパルムドール候補22作品のうちの一つ。11月から世界中の劇場で公開され、2008年度アカデミー賞の受賞も期待されている。(c)AFP/FRED DUFOUR