【ロサンゼルス/米国 14日 AFP】自転車レース、ツール・ド・フランス(2006 Tour de France)を制するも、ドーピング疑惑の渦中にいるフロイド・ランディス(Floyd Landis)の公聴会が米国仲裁協会(American Arbitration Association)の陪審員の前で始まった。

 黒いスーツに黄色のネクタイを締め、2006年度のツール・ド・フランスのイエロージャージーを思い出させるようないでたちで公聴会に臨んだランディスは、今回の公聴会で自らの汚名をすすぐことを望んでいる。

 公聴会が行われるペッパーダイン大学にある法廷に到着したランディスは「とても良い弁護団に囲まれ、特別である」と語った。

 会議議長のPatrice Brunet氏をはじめ米国反ドーピング機関(USADAUnited States Anti-Doping Agency)のRichard McLaren氏やランディスが選出したChristopher Campbell氏の3人の陪審員は、通常裁判官が座る一段高い席に座った。

 ランディスは2年間の出場停止とツール・ド・フランス史上初となるタイトル剥奪の可能性がある。

■USADA側は検査結果の正当性を主張

 USADAの弁護士であるリチャード・ヤング(Richard Young)氏は、「ランディスの件は強い関心を持たれているが、特別なことではない。同じようなことは数多くあり、そのうちの一つである。どんなにデータが処理されようが結果は陽性である」と語り、ランディスのドーピング疑惑は「氷山の一角」であるとし、科学的データの一つがランディスが人工的なテストステロンを使っていたことを指し示すであろうとした。

 また、ヤング氏は、裁定人が科学的データを検討する際に考える必要があることに「一つ目は陽性検査の基準と一致しているか。二つ目はそれらの解析結果は信頼できるものか」の二点を挙げた。

■ランディス側はLNDDの検査結果を非難

 一方、ランディスの弁護団の主席弁護士のMaurice Suh氏は「この件は完全なる災害である」と語り、USADAの全事例を、フランスのドーピング検査機関であるLNDD(Laboratoire National Depistage de Dopage)の誤った科学的研究方法によるものであると非難した。

 10日間に及ぶ公聴会でランディス側は、世界反ドーピング機関(World Anti-Doping AgencyWADA)に認可され、検査処理を管理する研究所International Standard for Laboratoriesの8つの違反を説明するという。

 Suh氏は「災害は一つや二つの悪いことから生まれるものではない。同時に起こった多くのことによって発生したものである。それがこの件だ」と語った。

 ランディスは、2006年のツール・ド・フランスの第16ステージで総合優勝が遠のいたように見えたが、第17ステージでは怒濤(どとう)の追い上げを見せ優勝を飾っている。第17ステージ終了後、ランディスから採取されたサンプルの一つから男性ホルモンであるテストステロンの数値が高く陽性反応が検出され、続く同位炭素値の検査でもランディスの尿の中に人工的なテストステロンの存在が確認されたとされている。

 ドーピング疑惑にさらされてきた多くのアスリートを弁護した経験を持つHoward Jacobs氏やSuh氏が率いる弁護団に加え、ランディスは妻のAmberさんや両親のポール・ランディス(Paul Landis)さんやアーレン(Arlene Landis)さんに支えられている。

 写真は、公聴会中に笑顔を見せるランディス。(c)AFP/GABRIEL BOUYS