ピカソ作「アヴィニョンの娘たち」、100周年を記念して特別展示会を開催 - 米国

【ニューヨーク 10日 AFP】現代美術の代表的絵画とされるパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)作『アヴィニョンの娘たち(Demoiselles d’Avignon)』の誕生100周年を記念して、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で特別展示会「Picasso’s Demoiselle d’Avignon at 100」が開かれている。会場には、同作品を完成させるまでに描かれた下絵など10点も展示される。

■現代美術史における伝説的存在

 一糸まとわぬ5人の売春婦たちを描いたこの作品は、当時の人々に大きな衝撃を与えた。ニューヨークタイムズ(New York Times)紙のマイケル・キメルマン(Michael Kimmelman)は「ピカソを超えることが現代美術の目標だった20世紀が終わった現在でさえ、この作品に驚きを覚えずにはいられない」と評している。この作品の下絵は、パリ市内のアトリエ、バトー・ラヴォワール(Le Bateau Lavoir)で、6か月を費やして描かれたという。

 展示されている下絵はどれも、カンバスに鉛筆で描いたシンプルなクロッキー。大きすぎる耳や重たいまぶた、アシメトリックな輪郭などが特徴的な古代イベリアの彫刻やアフリカン・アートからの影響を感じさせる。

 同美術館の学芸員は「ピカソがどのような課程を経てこの作品を作り上げたのかがよく分かる。この冒険が、彼をどこに導くのかピカソ自身にも分からなかっただろう。ピカソはカンバスという平面の上で、対象を複数の角度から幾何学的に分解する‘キュビズム(Cubisme)’という技法を確立した」と語る。

■100年たった今も人々を惹きつける傑作

 しかし、当時この作品を評価する者はほとんどいなかった。友達にさえ理解されず、拒否されたこともあったという。当時「The Architectural Record」誌は、ピカソの作品を「自然や伝統、慎ましさといったものを尊重しておらず、実に俗悪だ」と批判した。

 1924年、シュルレアリストの詩人アンドレ・ブルトン(Andre Breton)は、この作品を「絵画を超え、過去50年間の歴史を描いた劇である」と賞賛し、美術コレクターのジャック・ドゥーセ(Jacquet Doucet)を説得。ドゥーセはこれを30000フランで購入した。

 1939年には、ニューヨーク近代美術館がこの作品を買い取るに至った。その後、ピカソの他の作品も美術館のコレクションに加わった。学芸員は「これほど人を引き込む作品はない」と断言。「謎に包まれていて、理解しがたい、魔法の鍵のような作品」

 同展示会は、ニューヨーク近代美術館5階にて8月27日まで開催される。

 写真は、誕生100周年を迎えたピカソの作品「アヴィニヨンの娘たち(1907)」。(5月9日撮影)(c)AFP PHOTO/Stan HONDA