【京都 4日 AFP】京都で4日に開幕したアジア開発銀行(Asian Development Bank、ADB)の第4次総会に合わせ、東南アジア諸国連合(Association of South-East Asian Nations、ASEAN)10か国と日中韓による財務相会議が5日、同地で開かれる。

 1997年のタイ通貨バーツの急落を機に、「東アジアのトラ」として知られる香港、シンガポール、韓国、台湾などの経済新興国を混乱に陥れた、アジア通貨危機から10年が経過。通貨危機の悪夢再来を防止するため、地域間の絆を深めることを目的に、ASEANおよび日中韓13か国の財相が集結する。

 一方、アジアの究極の目的、「アジア共通通貨」の実現は、少なくとも数十年先の話となりそうだ。

■多国間での外貨融通協定合意の可能性

 1997年のアジア通貨危機を受け、ASEAN10か国と日中韓は危機の再発防止を目的に、2国間で通貨を融通し合う「チェンマイ・イニシアチブ(Chiang Mai Initiative)」を2000年に導入した。これにより、財政問題が発生した国は、危機が解消されるまで、協定締結相手国から外貨(通常米ドル)の借入れが可能となる。

 会議では、外貨融通協定を既存の2国間からさらに多国間に発展させた協定についても議論する。日本の財務省高官の話によると、5日の会合では「多国間外貨融通協定については、ある程度進展があるとみられる」と予測する一方で、「具体的な合意には至らないだろう」と語った。

■真の課題は「巨額の外貨準備金」

 しかし、エコノミストの間では、アジアが直面している真の課題は、「財政危機の再発防止」や「投機的な通貨攻撃の回避策」ではなく、「各国が抱える巨額の外貨準備金」であり、この有効利用策を協議することが必要だとの指摘もある。

 ADB総会に先立ち、アジア開発銀行の主任エコノミスト、Ifzal Ali氏は、「現在は(1997年とは)全く異なる状況だ。今、アジアが直面している問題は、膨大な外貨準備金と、その長期におよぶ悪影響だ」と語った。
 
 さらに、「危機というほど劇的でないにしても、(膨大な外貨準備金は)時間の経過と共に、高成長率や投資の好機を食いつぶしてしまう可能性がある」と指摘した。

 アジア地域が保有する外貨準備高は、中国の1兆ドル(約120兆円)を筆頭に、約2兆7000億ドル(約325兆円)にも達しており、世界の保有高の大半をアジアが占めていることになる。

 写真は京都で4日、ADB総会に出席する尾身幸次財相(左)と韓国の権五奎(クォン・オギュ、Kwon O-Kyu)財政経済相。(c)AFP/TOSHIFUMI KITAMURA