【コニャック/フランス 29日 AFP】ブランデー「コニャック」の生産で知られる南西部コニャック(Cognac)の住民は、ブドウ園の買収を始めたロシア人投資家らに疑惑の目を向け、その背後に控えるスポンサーの動機に警戒心を募らせている。

 こうした動きについて、コニャック事務局(BNIC)のアラン・フィリップ(Alain Philippe)氏は、2つの仮設を立てる。
 「(ロシア人投資家が)ここに来る目的は商機を探るためか、ブドウ園を数ヘクタール購入したことにかこつけて偽物コニャックの販売を正当化するためだろう。前者であれば反対はしないが」

 コニャックは、厳しい規制により生産されるブランデー。コニャックの町周辺のブドウ園で収穫されたブドウのみを使用し、長年蒸留されたものだけが「コニャック」を名乗ることができる。

 だが、ブランデー市場が急速に拡大するロシアでは、あらゆるブランデーが「コニャック」の名で販売されており、本物の評判を傷つけたり、独占権の侵害といった被害が発生している。

 フィリップ氏によれば、すでに約10のコニャック製造業者が、偽物による名称使用の合法化を目論む「悪魔との契約」を締結したという。

■懸念される犯罪組織の存在

 フィリップ氏の懸念は、これだけに留まない。「ロシアのブランデー市場には犯罪組織が暗躍している。中傷するつもりはないが、最悪のケースを恐れている」と語る。

 世界有数の経済圏であるロシアはまだ、知的財産権の尊重などを義務付ける世界貿易機関(World Trade Organization、WTO)に加盟していない。だが関係者らによれば、今年中には加盟手続きが完了する見込みで、フィリップ氏は「ロシアがWTOに加盟すれば、コニャックブランドが保護される」との期待を示した。

 Bonneuil村でコニャックを製造するJenssenEpsen Schulerud Soland氏は、「犯罪組織の存在大きな脅威だが、彼らと善良な投資家を混同してはいけない」と強調する。

 モスクワを拠点とするアルコール飲料メーカー、MVZは2006年7月にノルウェー資本のJenssenと提携、2007年末までにJenssenおよび同社所有のブドウ園24ヘクタールを買収する予定だ。

 また2か月前には、コニャック製造業のCroizet-Eymardが、すでにほかのブドウ園を所有しているRussian Wine Trustによって買収されている。

 Schulerud氏は、「名称の不正使用に対する懸念はわかるが、われわれの投資家は偽のコニャック販売ですべてを損うことに興味はない」と語る。

 さらに、「コニャックへの投資を検討しているロシアのウオツカ製造業者もいる」と述べ、由緒ある企業と信頼性に欠ける投資家との違いを強調。「MVZがモスクワで販売しているのは、Bonneuilで製造、瓶詰めされた正真正銘のコニャックだ」と語った。だが一方で、「知名度の低い投資家には、密輸コニャックの販売で利益を上げる者もいるだろう」と付け加えた。

■拡大するロシアのコニャック市場

 ロシアは歴史的にコニャックの消費量が高く、「19世紀のロシア宮廷ではカミユ(Camus)が飲まれていた」という。

 現在、ロシアのコニャック市場は世界第6位。経済成長に伴い、過去7年間でロシア国内のコニャック販売量は7倍になり、2006年の輸入は480万本に達した。

 コニャックが位置するシャラント(Charente)県でブドウ栽培6000業者と卸売300業者が加盟するBNICは、「コニャック」の名称に関する消費者教育を行うため、ロシア国内での宣伝活動を計画している。

 写真は26日、貯蔵室で撮影に応じるSchulerud氏。(c)AFP/PATRICK BERNARD