【東京 26日 AFP】道行く人々の怪しむような視線のなか、大学生のグループが「抱きしめあう」ことで日本を変える活動に取り組んでいる。

 この学生グループは、シドニー(Sydney)の街頭で「FREE HUGS(フリー・ハグ、自由な抱擁)」と書いたプラカードを掲げて見知らぬ人々をハグ(抱擁)するオーストラリア人のJuan Mannさんの存在をインターネットで知り、触発された。ハグの習慣のない日本で、あえて日本的な「つつましい文化」に挑戦する決意を固めたという。週末になると東京・原宿の街角でプラカードを手に、ハグの呼びかけに応じる人とならば誰とでも抱擁を交わしている。

■ハグをすると幸せな気分に

 ハグをしたアメリカ人のSteveさん(28)は、退院したばかりで松葉杖をついていた。「おかげで幸せな気分になったよ」と喜んだ。

 日本に移住してきたばかりのベルギー人の一家は、母親がまだ幼い娘のChloeちゃんを促して、見知らぬ日本人メンバーとハグさせた。はにかみながらハグを終えた少女は、にこにこしながら去っていった。

 しかし、ハグの呼びかけに応じるのは主に外国人で、ほとんどの日本人は視線をそらす。2人連れで歩いていた女子高生のうちの1人が近づいてきて、「カルトの一種か」と尋ねた時にはその場に寒々とした空気が漂った。

■「もてなしの心を」、留学経験者が始めた運動

 原宿でのフリーハグ運動を始めた井上咲姫さん(22)は、1年間のロサンゼルス留学から帰国した後、満員電車の中以外で誰かとスキンシップをしたくなったのがきっかけだと話す。

「帰国後、日本になじめずとても落ち込んでいました。誰もが冷淡で無関心に見えてしまって。米国で出会った人々のにこやかな笑顔と、温かなもてなしの心が恋しくてなりませんでした」。

「わたし自身がかつてそうだったように、現代の日本人はとても元気がなくて不幸せに見えます。時々、『大丈夫? 暮らしに満足している?』と思わず聞いてしまいたくなるほどです」。

■スキンシップは健康的な欲求

 握手でさえ交わされる場面の限られている日本では、不用意なスキンシップはひんしゅくを買いやすい。

 しかし、心理カウンセラーの清水おりえさんは、スキンシップは人間の自然かつ健康的な欲求に基づくものだと指摘する。

 患者とのハグにはいつでも喜んで応じているという清水さんは、「赤ちゃんは母親に抱きしめられて初めて安心し、愛されているな、ここにいて良いのだなと感じます。大人も同じで、ハグによって安心するのでしょう」と説明した。

 写真はシドニーのショッピングモールでフリー・ハグ運動をするJuan Mannさん。Mannさんは3年前から運動を始めた。その様子を映した動画が動画投稿サイト「ユーチューブ(You Tube)」に掲載されたことから、世界中に運動が広がっている。(c)AFP/Anoek DE GROOT