【東京 24日 AFP】ルーシー・ブラックマン(Lucie Blackman)さん事件で東京地方裁判所は24日、元不動産開発業、織原城二被告(54)に対し無罪判決を言い渡した。専門家らは東京地裁の今回の判断について、「検察側の求刑を覆す異例の判決」との見方を示している。

 2000年7月に行方不明となったルーシーさんは、7か月に及ぶ捜索の末、静岡県伊東市の洞窟で遺体となって状態で発見された。事件はルーシーさんの母国英国でも大きく報じられ、トニー・ブレア(Tony Blair)首相からも犯人逮捕を強く要請されていた。

 24日の判決では、織原被告はルーシーさんを除く9人の女性に対する準強姦致死罪などで無期懲役が言い渡されている。

■「検察の失態」、専門家指摘

 日本の司法制度の問題点を研究する専門家は判決について、「検察側の失態」と指摘。
 「日本の刑事裁判では従来、裁判所は検察側の主張内容をあまり詳しく調べないため、被告の99.9%が有罪判決を受ける。判事は検察側の主張を鵜呑みにする傾向がある」

 今回の裁判で被告は、オーストラリア人女性、カリタ・リジウェイ(Carita Ridgway)さんの準強姦致死容疑で有罪判決を受けた。

 東京地裁の栃木力裁判長は判決の中で、「(ルーシーさん事件では)被害者と被告が一緒にいたこと、被害者がその後、行方不明になり遺体となって発見されたことしか明らかにされていない」と述べた。

■裁判所の「検察依存」見直すべき

 同志社大学の総長で法学部教授の大谷實氏は、ルーシーさん事件の無罪判決は、状況証拠しか得られていないことから判事が特に慎重になったためとみる。

 「状況証拠しかない場合、判事が慎重になるのは当然のこと。今回の裁判も、捜査で得られた状況証拠に基づき進められたのだろう。そうした場合、判事が慎重になるのは、日本でも英国でもよくあること」

 大谷総長によれば、被告が無罪判決を受ける割合は、英国の40%に対し、日本ではわずか数パーセントだという。この差について同総長は、日本の検察が告訴するのは、有罪判決を導き出せると確信した場合のみだからと指摘する。

 こうした実情に対し、「裁判所は検察の調査に依存しすぎているのではないか」との批判の声も上がっている。
 「刑事事件では、検察の調査に頼りすぎる現在の傾向を見直す必要があるだろう」(大谷総長)

 写真は同日、判決後に都内で記者会見に臨むリジウェイさんの妹。(c)AFP/Yoshikazu TSUNO