【ベルリン/ドイツ 22日 AFP】ドイツ人が愛してやまないビール。しかしこのビールの値段が上がるかもしれない危機に直面している。国内の大麦畑が、助成金が下りるバイオ燃料用の穀物畑に取って変わられているのだ。

■ビール大国でも値上げ

「多くの醸造業者は、価格を上げるほかに方法はありません。1月に付加価値税が3%上がった際には、その変動を小売価格に反映させることはありませんでした。しかし、今回ばかりは仕方がありません」と語るのは醸造社協会のKai Schuerholt氏。

 FranziskanerBeck’sを有するベルギーのインベブ(InBev)と、ドイツのラーデベルガー(Radeberger)は、わずかな値上げを行う予定であることを発表している。

 ビールはドイツで重要な存在といっても過言ではない。国内消費量は膨大で、市場競争は激しく、価格に関しては非常に敏感なのだ。

 価格は、500ミリリットルのグラスが通常3ユーロ(約480円)。これは、他の欧州諸国のビール好きがうらやむ値段だ。

 ドイツでは1人あたりの1日のビール消費量は0.31リットルだという。
 
■バイオ燃料用の穀物生産が増加、前年の大麦不作が影響

 醸造に不可欠な麦芽の原料となる大麦の前年のドイツ市場での価格は、1トンあたり200ユーロ(約3万2千円)から400ユーロ(約6万4千円)へと倍増した。

 大麦生産者及びビール業者は、前年の大麦の不作が、大麦畑を菜種などのバイオ燃料用の穀物畑に変えようとする傾向を大きくさせたという。国内の大麦畑は年間5%づつ減少している。
 
 バイオ燃料の台頭は進行しており、国内1200万ヘクタールの耕地のうち、200万ヘクタールが既にバイオ燃料用の穀物栽培に使用されている。

「バイオ燃料は土地を占領しつつあります」と語るのは製粉業者協会のManfred Weizbauer氏。同協会は、バイオ燃料用穀物への助成金カットを求めている。
 
「ドイツ政府はよく考えるべきだ。エネルギー確保よりも食糧確保を重視すべきだ」と同氏は語った。
 
 バイオ燃料が影響を与えているのはビールばかりではない。パンの原料となる穀物の生産も減少したため、パンの価格も10%上昇するだろうとパン業界は警告している。

 また、耕地が新しい作物用に変えられる現象が起こっているのもドイツのみではない。メキシコでは同様の現象のため、トウモロコシの価格が急激に上昇しているのだ。ドイツの製粉業界は、メキシコほどの重大な価格変動は起こらないかもしれないがとしながらも、国内の穀物価格も徐々に上昇するのではないかと危ぐしている。

 生物燃料用の穀物生産は欧州連合(EU)が奨励している。EUは2020年までに、少なくとも10%のバイオ燃料を含んだ自動車燃料の実現を奨励している。

 しかし、穀物業界のJens Redemacher氏は、ビール業者にも責任があると言う。「ビール業者が安価な大麦を求めるため、生産者は利益を望めない大麦の生産をやめるほかはない。バイオ燃料だけが悪者ではないんです」

食物業界は「バイオ燃料用穀物の購入者との競争に慣れるほかない」とRedemacher氏は述べる。

 写真は、ミュンヘンで開催された世界最大級のビールの祭典、オクトーバーフェスト(Oktoberfest)で、大量のビールを運ぶウェイター(2006年9月16日撮影)。(c)AFP/JOE KLAMAR