【シドニー/オーストラリア 21日 AFP】オーストラリア沖で漂流するヨットが見つかり、乗組員3人が行方不明になっているが、警察当局は21日、「犯罪に巻き込まれた可能性は薄い」とする見解を発表した。乗組員の捜索は続いている。

■発見当時、食事の準備もされたまま…

 全長12メートルの双胴ヨット「KAZⅡ」は19日、タウンズビル(Townsville)沖80海里で発見された。ヨットに初めに到着した救急隊員によると、エンジンはかかったままになっており、コンピューターの電源が入り、食事の準備もされていたが、乗船していた56歳、63歳と69歳の兄弟の姿が見当たらなかった。

 警察は21日、「KAZⅡ」をタウンズビルまで曳船し、犯罪科学捜査の専門家による検証や、全地球測位システム(GPS)のナビゲーション機器に残された情報の分析を行った。

■GPSの分析によると、船上から消えたのは15日か

 調査に基づく発表によると、GPSデータの分析結果では、ヨットは15日までは予定通りの方向に進んでいたが、15日にスコールが発生し海が荒れている海域に入っている。

 「この日以降、船は潮や風に流されて進んでいたようだ。つまり、3人は15日にヨット上からいなくなった可能性がある」とWall警視正は記者会見で述べた。ヨットには救命いかだが装備されていた様子はなく、小型ボートはヨットに残されたままだった。

 捜索活動は、ヨットが15日に航行していた海域に範囲を狭めて行われている。また乗組員らが行方不明になった状況については、いくつもの可能性を考慮しながら、捜査が行われている。「しかし初期段階の捜査によると、事件に巻き込まれたわけではないようだ」と警察当局者は話している。

 オーストラリアのメディアはこの事故を、1872年に大西洋で発見され、発見当時乗組員10人が忽然と姿を消していた航海史上最大の謎とされる「マリー・セレスト号(Mary Celeste)」のようだと報じている。

 写真はロットネスト(Rottnest)島付近で、燃料の補給船の救助にあたる海軍のヘリコプター(1998年5月5日撮影)。(c)AFP