【シカゴ/米国 16日 AFP】バージニア工科大学(Virginia Tech)で16日に発生した銃乱射事件は、米史上最悪となる死者30人以上を出した。怒りに燃えた男が学校に侵入し、手当たり次第に撃ち殺す――われわれの理解を超えた犯罪だ。

 犯人は、冷徹に犠牲者を狙う連続殺人鬼でもなければ、復しゅう心から自らの家庭を崩壊させた夫でもない。道理もなく大学のキャンパスで銃を乱射し、最後は自身の命も絶った犯人の詳細は、いまだに不明だ。
 
 学生らの目撃証言によると、犯人は「アジア系」の風貌で、身長は183センチ程度。茶色のアウトドア用シャツに、黒のベストを着ていたという。恐怖に立ちすくむ学生や職員に対し、まるで、可能な限り多くの人を殺そうとするかのように銃を発射し続けたという。警察は現場から、銃2丁を押収。現場となった建物には内側から鍵が掛けられていたという。

■明確な「事件の引き金」ない

 ジョンズホプキンス大学(Johns Hopkins University)で職場精神医学を研究するAlan Langlieb所長によると、大量殺人の犯人は一般的に、孤立した閉鎖的かつ非社交的な「孤独なガンマン」タイプが多いという。しかし、今回の事件の犯行心理については、「何が事件の引き金となったのか明確な答えはない」と語る。

 「綿密な計画のもとに行われる大量殺人もあれば、朝起きて、『一騒動起こしてやろう』と思いつくものもある」とLanglieb所長は述べ、直接的な犯行の動機を求めるには、人間の行動は複雑すぎるとする。

 同所長は、「今回のような乱射事件を企てるほど人命を軽視する人間は少なく、ほとんどが、こうした凶悪事件を実行することはない」と語る。だが、まれに、病的な精神不安定を抱え、社会から孤立し、世界への怒りをぶちまけたいと願う者がおり、そうした人物にとっては、たとえば小さなニュース報道でさえも「きっかけ」になりうるという。

 そうした人間が、世間の注目を集めることを目的に、大量殺人を実行してしまうことがあるという。このような場合、事件発生の可能性や事件を起こすとみられる人物を事前に予測することは、ほとんど不可能だという。

 「犯人がある日、ふと大量殺人を思いつき、その時に偶然、武器が手元にあるという不幸が重なった場合、悲劇が起きてしまう」とLanglieb所長は説明する。

■際だった「問題行動」、調査結果には見られず

 1974年から2000年6月の間に発生した学校襲撃事件は37件あり、その犯人41人に関する調査を行った米財務省検察局(US Secret Service)の報告によれば、こうした事件を起こした犯人を正確に特定する「人物像」は、まだないという。

 調査結果では、犯人の中で落第歴のある者はほとんどいなかった。それどころか、学業優秀で表彰を受けている犯人も数人いるという。

 犯人の6割以上は学校で問題を起こしたことはなく、襲撃事件を起こす前にも、学業成績、学校への関心、友人関係、素行などに際立った変化は見られなかった。
 
 最も割合が高かったのは学内の「主流派」に属する学生(41%)で、次いで「一匹オオカミ」タイプの学生が約33%、「疎外グループ」に属する学生が約25%となっている。

 暴行歴や犯罪歴のある者もほとんどいない。一方で、約75%が犯行前に、他の生徒から「いじめ」「脅迫」「暴力」「傷害行為」などを受けたと感じているという。

 また、「大きな挫折」や「個人的な失敗」にうまく対処できなかった経験を持つ者が多く、実に98%が、犯行前に大きな挫折を経験または予測しているのも特徴の1つだ。

■多くの事例で「犯行は計画的」

 米財務省検察局は、乱射事件のほとんどが「衝動的な行為ではない」としている。同調査によれば、犯人の半数以上が少なくとも1か月前には事件を計画しており、6割以上が実行前に、知人1人以上に犯行計画を明かしている。

 また、米連邦捜査局(FBI)による「学校襲撃事件」に関する調査によると、犯人の学生には概して、「暴力への執着」「憂うつ」「自己陶酔」「疎外感」「他者への共感や信頼の欠如」「怒りコントロール能力の欠如」「不寛容」などの傾向が見られるという。

■凶悪事件を防ぐ解決策は

 「学校襲撃事件」の解決方法についてLanglieb所長は、「社会やテレビの暴力的映像を非難しても始まらない」と語る。ある状況に対する人間の反応は多様であり、時代や文化に関わらず反社会的人格は成長期の早い段階から芽生えることが判明しているからだ。

 Langlieb所長は、「助けを必要としている人物に社会が手を差し伸べることで、事件を未然に防ぐことは可能だ。しかしそれは、ストレスだらけの環境が『キレる』人間を生み出すという意味ではない」と説明する。
 「人間は常に怒りを抱えてきた。われわれは今日、そうした怒りがさまざまな『兆候』となって現われることを理解している。事件の遠因について、環境の中で起こることと、人間がストレスにどう対処するかとに、大きな違いはない」
 
 写真は乱射事件のあったバージニア(Virginia)州ブラックスバーグ(Blacksburg)のバージニア工科大で16日、慰め合う同大の学生たち。(c)AFP/Win McNamee