【シカゴ/米国 12日 AFP】米ノースカロライナ州立大学(North Carolina State University)やハーバード大学医学部(Harvard School of Medicine)などで作る研究チームは、6800万年前の恐竜ティラノサウルス・レックス(T-rex)の大腿骨の化石に、骨を構成する繊維状タンパク質のコラーゲンが残っていることを確認したと発表した。12日付の米サイエンス(Sience)誌に掲載した論文で明らかにした。

 これまでの常識では、コラーゲンは数百万年で分解してしまうと考えられていた。だが、ノースカロライナ州立大学の研究者らが、2003年に米北西部モンタナ(Montana)州で発見されたT-rexの足の骨から採取したタンパク質小片を化学解析と分子解析にかけたところ、「かろうじて気づく程度」ながら、かなりの確率で恐竜の軟組織の一部と思われるものが確認できたという。

 ハーバード大学医学部ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(Beth Israel Deaconess Medical Center)の質量分析学主任、John Asara博士に、再分析を依頼。1年半にわたる細心の質量分析の結果、コラーゲンの存在を確かめるとともに、10-20のアミノ酸の配列を解明した。

 さらに、これらのアミノ酸配列を現代の動物と比較したところ、ニワトリのものとよく似ていることが分かった。また、ニワトリほどではないものの、カエルやイモリとも共通点があったという。

 鳥と恐竜が進化の過程で関連しているとの仮説を裏付ける画期的な発見で、学説上の前提を覆すものと研究者らは見ている。

 Asara博士は、「ほとんどの人が鳥は恐竜から派生したのだと信じているが、これはすべて骨格の形状に基づく判断だ。今回の発見で、鳥と恐竜が実際に近縁だという確率が高くなった。間違いなくそうだと言えるほどのアミノ酸配列は確認できなかったが、仮説を支持する根拠にはなる」と述べた。

■これまでの学説を覆す発見

 また研究者らによると、この発見は化石化の過程そのものにおいても、これまでの学説を覆す可能性があるという。

 これまでは、タンパク質のような有機物は百万年後には分解してしまうと考えられてきた。だが今回の発見で、たとえまれな例であるにせよ、数百、数千万年前の有機組織からも遺伝上の手がかりとなるタンパク質を得ることができるとわかった。

 ノースカロライナ州立大学で古生物学を教えるメアリー・シュバイツァー(Mary Schweitzer)準教授は、「何世紀にもわたって、化石化の過程で有機組織はすべて破壊されてしまうのだと信じられてきたため、だれ1人として骨そのものを注意深く観察してこなかった」と説明する。

 化石の分子解析データが得られれば、化石と生体構造との関係や、現在見られる子孫にはない独特な有機組織との関連性とを検証することが可能になるかもしれず、「地球上の生命が進化してきた過程をよりよく理解できるようになる。実に素晴らしい発見だ」と述べた。

 写真はニューヨークの米自然史博物館(American Museum of Natural History)で2005年に開催された「恐竜展」で展示されたT-rex。(2005年5月10日撮影)(c)AFP/Spencer Platt/Getty Images