【韓国/ソウル 31日 AFP】呉連鎬(オ・ヨンホ、Oh Yeon-Ho、42)氏は、自身の事務所のドアに掲げた「市民みんなが記者である」という標語を心から信じている。この信念に突き動かされた呉氏は、世界最大の影響力を誇る「シチズンジャーナリズム」ウェブサイト、「OhmyNews.com」を立ち上げ、何万人という強力なアマチュア記者を創出してきた。ソウル(Seoul)事務所で取材に応じた呉氏は「『市民みんなが記者である』はもはや標語ではなく、現実を表す言葉である」と語る。

 2000年、呉氏が世界で初めて「シチズンジャーナリズム」のウェブサイトを立ち上げた時点では、事務所の職員はたった4人。現在、5万人の記者が80人のスタッフの協力を得て国内で大量のニュースを発信している。記者の所在地は国内だけにとどまらない。呉氏は「日本で3000人、世界中でさらに2500人が登録している。学生、主婦、警察官、小説家、医者、そして政治家さえもが記者として活動しており、われわれはあらゆる身分の記者を抱えている」と言う。


■オーマイニュース(OhmyNews)の登場で変わるジャーナリズム観

 現在、国内で最も強い影響力を持つウェブニュースと考えられるオーマイニュースは、伝統的な報道各社との競争を展開し、国内のみならず、世界中でジャーナリズム観を変えつつある。

 ソウルのCyber University of Foreign Studiesでジャーナリズム学を担当するKim Byoung-Cheol教授は「従来のマスコミは、一方的に何がニュースかを決定し、一般社会に向けて発信してきた。だが、オーマイニュースの登場によって国内ではマスコミの在り方が変化しつつある」と言う。同氏はさらに「今や市民はニュースの作者であり、同時に消費者でもある。エリートジャーナリストが報道を独占する時代は終わった。シチズンジャーナリズムは一過性のものではなく、広がり続ける民主化の流れに即した世界規模の動きだ」と続ける。

■80%がアマチュア記者の投稿記事

 オーマイニュースが掲載する記事の約80%がアマチュアジャーナリストによる投稿で、1日最大200記事にのぼる。記事の対価が少額(2万ウォン、約2500円)であるにもかかわらず、大量の記事が寄せられる続けている。

 2002年後半以来、約200の三面記事を投稿してきた有機栽培農家のSong Seong-Yongさんは「対価は少ないが、消費を抑える自分のライフスタイルに合っている。オーマイニュースは、地方在住のわたしが社会問題にかかわる手段だ」と語る。

■オーマイニュース成功の背景

 オーマイニュースの成功の背景には「国内全土にインターネット網を張り巡らす」という政府の方針も関係している。現在国民の70%がブロードバンド環境にあり、オンラインニュースの利用者数は増加の一途をたどる。呉氏は「いつでもどこでもインターネットを利用できるのは大変素晴らしいことだ」と語る。

 2005年までの3年間、オーマイニュースは赤字計上が続いていたが、2005年に初めて利益を上げた。2006年の決算結果はまだ明らかになっていないが、投資費用が原因で赤字が見込まれるという。詳細な数字は提示されなかったものの、呉氏によれば平均年収は60億ウォン(約7億5180万円)で、その70%が広告収入だという。

■甚大な影響力

 オーマイニュースの影響力は甚大だ。2002年大統領選をめぐってオーマイニュース「ニュースゲリラ本部」が展開したボトムアップの報道は、盧武鉉(ノ・ムヒョン、Roh Moo-Hyun)大統領の逆転勝利に大きく貢献した。同大統領の選挙後初のインタビューはオーマイニュースによるものだった。選挙戦を振り返り、呉氏は「盧大統領の新鮮な選挙活動では、伝統的な報道機関が完全に見逃していた、ニュースの影響力の大きさが示された。われわれは、保守的なマスコミによって無視されてきた草の根レベルの市民の声を取り上げたかった」と語る。

 市民の心をとらえ続けるのは、2004年の盧武鉉大統領弾劾訴追といったオーマイニュースによる大事件の報道だ。米軍兵士が2人の女子学生をひき殺したいう報道によって、大規模な反米活動に火がついたこともある。

■オーマイニュースに込められた思い

 オーマイニュースの報道機関に対する挑戦姿勢には、呉氏自身の経歴が関係している。1980年代、軍事独裁政権に抗議する学生運動を行った呉氏は1年間投獄され、1990年代には進歩主義の雑誌制作に関与し始めた。もともとは韓国文学を専攻していた呉氏だが、後にジャーナリズム学に転向し、米国でジャーナリズムを学んだ。

 呉氏は「取り上げるニュースを報道機関のみが決定する体制は変えるべき」と主張し、「プロのジャーナリストは、ニュースの受け手と同じ立場に立つべき」と語る。

 「オーマイニュース」という名前には、呉氏が考える「(プロ、アマ問わず)記者のあるべき姿」が表れている。「ニュースは記者を走らせる。良いニュースは記者の胸を高鳴らせる。『オーマイガッド!』と声を上げてしまうようなニュースに出会い胸が高鳴った時、記事を書くべき。そのような記事を集めたのが『オーマイニュース!』だ」と語る呉氏の顔には、大きな笑みがたたえられていた。

 写真はオーマイニュースのライター(2007年3月19日撮影)。(c)AFP/JUNG YEON-JE