【マニラ/フィリピン 30日 AFP】28日に首都マニラ(Manila)で発生したバス乗っ取り事件ので、人質にとられていた保育園児の親たちが30日、警察に対し、逮捕された主犯格のアルマンド・ドゥカット(Armando Ducat)容疑者の釈放を要求している。

 同容疑者は、マニラのスラム街にある保育園の園長として、「地域社会に大いに貢献してきた素晴らしい人物」であるためだという。同保育園児の親や保育士たちは、30日午後にマニラの警察本部前でドゥカット容疑者の釈放を要求するデモ行進を行う予定だという。

 デモに参加する予定の母親たちは、フィリピンスター紙やPhilippine Daily Inquirer紙に対し、同容疑者を次のように称賛し、訴追する意志はないことを明らかにした。

 「彼はマニラの貧困層救済に尽力してきた『善人』であり、事件後もその見方に変わりはない」「彼は子どもたちに無料で教育を受けさせ、給食や衣服も無料で提供してくれた。何から何まで助けてくれて、大変感謝している」「彼は、私たち貧しい者のために、自分が正しいと思ったことをやっただけ」「彼はただ、私たちを助けたかったのだ。すばらしい人だ」と口々に述べている。

 また、自らも人質となっていた保育士のElmer Callejaさんも、「私たちは彼の信念を尊敬しています」と語る。

 ただし、グロリア・アロヨ(Gloria Arroyo)大統領は、模倣犯罪を防止するためとして厳正な処分を求めている。

 事件では、ドゥカット容疑者とCesar Carbonell容疑者が28日、園児26人と保育士4人を人質にとってバスにたてこもり、政府の腐敗を糾弾すると同時に、園児に対する無償教育と住宅の無料提供を要求した。たてこもりから10時間後、人質は全員無事解放され、容疑者らは投降した。

 写真は29日、マニラの警察本部に収監されているドゥカット容疑者。(c)AFP/JOEL NITO