【石川 26日 AFP】25日午前9時42分ごろ、能登半島沖を震源とするマグニチュード6.9の強い地震が発生し1人が死亡、162人以上が負傷した。

■生死を分けた間一髪の脱出

 元建設作業員の男性 (73)は、地震が起きた瞬間、反射的に家から飛び出したという。がれきに埋まっていたところを救出された男性は、生死を分けたのはまさに運だったと振り返る。

 25日に能登半島沖で起こった強い地震で、男性の木造住宅の一部が破壊されてしまった。男性は、外に出て修理を始めたという。

「その直後、私のいたところからほんの数メートルしか離れていない家が、完全に倒壊したのです。もうなんと言えばいいのか・・・」元建設作業員の男性は震えながら、彼の家を完全ながれきの山に変えてしまった余震について語った。

「まさに間一髪でした」と語る男性の目は、赤くなっていた。

「あの瞬間、どうして家を飛び出したのか今でも分かりません。死なずに済んだのは本当に偶然だと思います」

 関係者によると、輪島市では200戸以上が損傷し、25戸が全壊した。その多くは木造で、重い瓦ぶき屋根だという。

■週末の地震が不幸中の幸い

 製紙用の木材チップを製造する会社を経営する男性(81)は、地震が15人の従業員と家族が工場にいない週末に起こったことを不幸中の幸いだと考えている。

 男性が1人で、倉庫に隣接する事務所で働いているときに地震が起こった。倉庫の屋根が落ち、その衝撃で木材チップが周囲に飛び散った。

「地震が平日に起こっていたらと思うとぞっとします」と男性は語る。

「何が起こったのか実はよく覚えていないんです。とにかく机の下に隠れることで頭がいっぱいでした。」と男性は身振りを交えて地震直後の様子を語る。

「ほんとうに驚いたし、怖かった。在庫は無くなってしまいましたが、うちの会社から死傷者が出なかったのは不幸中の幸いです」

 金物店を営む男性(64)は、「こんな大地震に遭うとは思ってもみませんでした」と語る。男性の店は一部が損壊した。

「神戸の地震はテレビで見ましたが、よその話だと思っていました」

「でも、自分で実際に体験すると、地震は本当に恐ろしいものだと思い知らされます。自分でできることは限られています。うちの家族と従業員に死人が出なかったのは、運が良かっただけとしか言いようがありません」

 写真は26日、輪島市門前町の倒壊した民家からがれきを取り除く警察官。(c)AFP/KAZUHIRO NOGI